自己チュウにはわけがある
齊藤勇
ISBN4-16-660174-1
読後の感想
自己中心的な人について書かれた書かと思いきや、そうでなく、人はみな多かれ少なかれ自己中心的であるという内容のもの。
作者の体験談などを交えながら書かれているのでかなり分かりやすい文章である。特に6.の「人は自分をどう思っているのだろう」は興味深い。
結論として、自分が思っているよりも他人は自分について無関心であり、気にしなくてもいいよ、ということ。
印象的なくだり
言い訳は、自己評価維持にもっともよく使われる方法ですし、言うだけなので、簡単で便利な方法とも言えます。
しかし、本人の言い訳など信用できない、という対人関係の矛盾もつくりだしていくことになります。
それだけではありません。実はこの言い訳の心理は、自分自身にも向けられるので、自分で自分にだまされ、自分に対する評価が甘くなってしまうことがままあるのです(P125)。
電話は、そこにいない人と話すわけです。
ということは、そこにいる人を無視することになります。無視された人は愉快ではありません。特に、自分を敬うべきだと思っている人間にそれをやられた場合、自尊心を傷付けられ、腹立たしく思うのです。
男性は、人間関係の優劣に敏感です。人と出会ったとき、自分が上か下かをまっさきに気にします(P142)。
本当は他人は、あなたのことをそんなに気にしていないのです。
そのことを知ったら、過剰な自己意識が低められ、かなり気持ちが楽になると思います(P146)。
言行不一致は、日本の社会では当たり前です。ホンネとタテマエという言葉が当然のように使われ、人間関係にはウラとオモテがあるのが常識ではないか、とされているのです。
半ば公認で「あれはタテマエだよ」と言えば、許される社会なのです。しかし一方で、そのような行動を強く非難し、軽蔑する社会でもあるのですから複雑です。カメレオン社会のはずなのに、色を変えるのを非難したり、蔑視したりするのです。このことは、都合によって言い訳もでき、批判もできる自己中心性が入り込みやすい社会だともいえます(P188)。
人はデキる人に対しては、常にプラスとマイナスの二重の気持ちをもって接しているのです(P192)。
みんな、完璧を目指し、そうすれば魅力も増すと思って努力しているのに、一方では、完璧になった人に対して好意をもたないのですから奇妙です(P196)。