『今日から日雇い労働者になった』

今日から日雇い労働者になった
増田明利

読後の感想
ライター自身が実際に、日雇い労働者を一ヶ月経験してその体験談を書いたルポ。その間はもちろんネットカフェ住まいで使えるお金は日雇いで稼いだお金という徹底ぶり。ちゃんと毎日使ったお金の内訳も書かれており、それを見て、まず感じたことは、構造上日雇い労働者をしているとお金が貯まらないようにできているのだな、ということでした。

つまり、支出の大部分が食費・嗜好品となっていて、知らない間になくなってしまうお金(いわゆるラテマネー)だらけなのです。そして、宿代としてのネットカフェ代や宿泊費が不安定。仕事によって泊まるところを変えたりしているので、先の支出の予測が立たない、ということで無計画に手持ちのお金を基準に支出を決めてしまっているのです。

余談ですが、自分の体験できないことを疑似体験できるので、僕はこの手の潜入ルポものが大好きなのです。

が、今回の本は残念な印象しか残りませんでした。

なぜなら、文章の端々から、日雇い労働者を小馬鹿にするような著者の考えが伝わってきたからです。完全に「ちょっと小馬鹿に体験してみた」感がありありと分かり、はっきり言って余り気持ちのいいものではありませんでした。 というわけで残念。

印象的なくだり
図書館に入りトイレの個室でお金を数えるとおよそ1万4000円と小銭が少々。一瞬「4日働いてて1万4000円残るのか、悪くないな」などと考えたがこれこそが大いなる錯覚なのだ。
日当9000円として20日働けば18万円、もう少し頑張れば20万円ぐらいの収入になるから生きてはいける。
だけど年収にしたら240万円がいいところだ。民間企業で働く人の平均年収は約430万円だから190万円も少ない。日雇いは不安定であぶれたら無収入、保障もないから体調を崩して1週間働けなかったら路上生活にドボン。非常に危険なのだ。
それでもこういう生活から抜け出せないのは日当が8000円~9000円と微妙な金額だからだ。とりあえず1日働けば飯が食え銭湯にも入れる。ネットカフェで雨露もしのげる。これはこれで不便なく生きていける。こうしていくうちに低賃金を低賃金と思わなくなり危機感が薄れていくのではないだろうか。ただ生きていくだけならネットカフェで暮らす方が気楽だもの・・・(P.044)。

試食品をつまんでは売場のおばちゃんやデモンストレーターのお姉ちゃんとお喋りした。普段はこんなこと絶対にしない、だけど日雇いの仕事なんかしていたらこうでもしなければ人と会話することがないのだ(P.140)。

よく寝た。目が覚めたのは10時。今日は予定外のアブレ休日だから稼ぎがないという不安はなく、むしろ日曜日に休めるのは4週間ぶりなのでゆったりした気分。
それもこれもお金があるから安心できるのだ。本当にお金は精神安定剤みたいなものだと思う(P.155)。

こういった仕事、「経験は不問です」とか「どなたにでもできる簡単な軽作業」という甘い言葉で人操りをしているが、早い話「無知で元気な馬鹿、歓迎します」ということだ(P.162)。