自衛隊に学ぶメモ術
平野隆之監修
松尾喬著
読後の感想
本書は自衛隊について書かれています。
といっても、防衛や災害救助について書かれている訳ではなく、自衛隊という組織の中でも情報伝達という一側面に注目して書かれています。
ではなぜ自衛隊なのでしょうか?
そもそも自衛隊を含めた軍隊という組織は、生死の分け目になるため組織自体が合理性のかたまりなのです。
そういう意味で、自衛隊の常に正確な情報を正確に伝えるという合理性の部分に特化した内容になっています。
本書における自衛隊とは、常在戦場の精神の組織です。
この精神を表したものに「正・早・安・楽」があります。これはこの順番であることが重要なのです。
自衛隊の仕事術は、「正・早・安・楽」をキーワードとしている。
(中略)
「正」とはミスの最小化、「早」とは仕事のスピードアップ、「安」とは安心とコストダウン、「楽」とはもっとラクにできないか、楽しくできないかという工夫を指す(P.003)。
「正・早・安・楽」はそれぞれが個別に成り立つものではない。
「正」は「正・早・安・楽」の基礎になるもので、最重要で最優先されるものだ。
自衛隊では「正」を徹底的に繰り返す訓練を行う。そうすれば「早・安・楽」もできるようになる。逆に、「早・安・楽」が先行してしまうと、「正」が身につかず訓練は成り立たない(P.021)。
つまり、正確性を残したままいかにして省略するかが肝なのです。
さくっと読める割には実践が難しいと感じた良書でした。おすすめ。
印象的なくだり
言葉で聞きもらしてはいけない目印は「ようするに」だ。
「ようするに」は文字通り、それまでに話した内容を繰り返して要約するときに使うので、重要情報の前ふりの言葉である。
(中略)
重要情報の前ふり言葉としては、「つまり」「たとえば」「なぜなら」「だから」「結果として」などがあり、これらの言葉の次にくる語句は重要情報だ(P.025)。
自衛隊員にとって、メモは間違いなく内容を確認する指示書である。そのためにはメモした内容が理解しやすいように書き方にも工夫する。大事なことは要点のみの記録。そこで活きてくるのがムダなことを書かないテクニックだ。
(中略)
午後1時半とか師団指揮所とか書いている暇はない。時刻はすべて24時間表記にして、数字の間に「:」をつけたりしない。「:」をつける時間がムダだからだ。1330でわかる。とにかく24時間で時間を表すよう習慣づけられている。これも「正・早・安・楽」の原則による(P.039)。
箇条書きの文章の鉄則は「一文一意」だ。それは一つの文には一つの意味のことしか書かないということだ。
10時にA社が新商品のプレゼンに来るとする。そんなときには「1000A新商品プレゼンにクル」と書いてしまいがちだが、A社が来るという情報とその目的が一文に入っているので、簡潔に内容がつかめない。どうしても2つ目の「来る」という意味の情報が薄れてしまうからだ。「1000Aクル。新商品プレゼン」のように、行動と目的を2つに分けて書けば見た瞬間に2つの情報が理解できる(P.047)。
多くの場合、部下や新人を指導するとき、うまく仕事ができない人には声をかけて世話をするが、うまくできている人には特に声をかけたりしない。これでは配慮に欠ける。できている人に対しても「よし、いいぞ」のように声をかける。
この一言は、君のこともちゃんと見ているよという情報発信だ。できている人に対しても目配り、気配り、そして手配りをすればいっそうのヤル気を導き出す(P.101)。
これから実践すること
メモは何度も読み返してこそ価値が出る。環境に変化があったり、新しいアイデアが浮かんでいたりしていると、そのつど情報がリフレッシュされて新しい気づきが出てくる。「よし、追加で書き留めよう」とペンを持ったもののメモ帳に追加情報を書く余白がない、などということになったらメモの価値がなくなってしまう。書いた情報に対しては、必ず余白を設けて追加情報を書けるようにしておく(P.049)。
記憶に留めるとともに、読み返すたびに感想や新しい気づき、疑問点などを追記していく。追記をする際は、追記であることがわかるように赤や青などに文字の色を変えるか、星印などのマークをつけて一目でわかるようにする(P.050)。