『グリーン革命(上)』

『グリーン革命(上)』
トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社

読後の感想
個人でできることは余りにも小さく、そのような行為をしても、企業や国家の前では軽く吹き飛ばされてしまう。こんな風に知りつつ立ち向かう、といった勇気を与えてくれた本です。上巻は総論的な事柄に終始しているので、知識として有意義でした。
ところで、第四章のサウジアラビアとエジプトの関係について、同様のことが日本とどこかの国で(今後も)起こりうるのではないかと、ビクビクしております。

印象的なくだり

現在の勃興する経済勢力や資本家にとって暗いニュースは、資本主義への離陸期に燃料を供給するための未開拓のコモンズが残り少ないことだ(P106)。

いつの日か、冷蔵庫や電子レンジやテレビのような家電製品ばかりか、自動車まで、すべてリースでまかない、メーカーに戻して何度もくりかえし完璧にリサイクルする。ゆりかごから墓場へではなく、ゆりかごからゆりかごへと。この手法のさまざまな形が、フラット化した世界での経済成長にとって、唯一の有効な解決策だろう(P109)。

私はよく”地中海のイスラム”と”紅海のイスラム”といういい方をする。イスラムの重心が、ベイルート、イスタンブール、アレクサンドリア、、アンダルシアをはじめとする海運と貿易と交流の世界である地中海に向けて進めば、イスラム教もそれに属する社会も、コスモポリタンの傾向を強める。イスラムが、荒々しく孤絶した砂漠、原油の源である紅海に向けて進めば、臆病に、内向きに、外国人嫌いになる(P138)。

アメリカ独立の標語は、「代表者(議員)なき課税はない」だった。石油主義専制国家の標語は、「課税なく、代表者もない」。石油を輸出して金がうなっている政府は、国家予算のために国民に課税する必要がなく-ただ油田を掘って、原油を外国に売ればいいだけだ-国民の声に耳を傾けたり、国民の希望をだ表する必要もない(P156)。

言い換えるなら、原油価格の高騰により、通貨が実力以上に高く評価され、莫大な額の輸入を煽り、国内の製造業が滅びる-すなわちオランダ病にかかる-と同時に、女性の社会的地位が低いままになる。国民がオイルマネーで安い輸入品ばかりを買うようになると、輸出産業全般が消えてしまうが、とりわけ、繊維・衣料など、教育程度の低い貧しい女性が、経済の梯子にはじめて足をかけるような初歩的労働が消滅してしまう、とロスは指摘する。石油によるにわか景気では土木建設の仕事ばかりが増え、男性が雇用されて、いっそう力を強める。ロスの研究は、国の原油輸入収入が増えると、他の要素が同レベルの場合でも、労働力に占める女性の割合が減り、政治的地位を得る女性の数も減ることを示している。「この結果は、石油生産が家庭外で働く女性の数を減らすことによって、女性の政治的影響力を弱めるという理論を裏づけている」と、ロスは述べている(P158)。

(前略)、接続のためのツールがいかに安くなろうと、ピラミッドの底辺の人々は、世界がフラットであるとともにグリーンでなければ、ほんとうの意味では接続されないということが、その後わかりはじめた。クリーンで信頼できる安い電気がふんだんにあるときにはじめて、彼らは普遍的な接続が得られる。なぜフラットにくわえてグリーンなのか?発展途上国が電話通信だけではなくエネルギーの面でも他国を追い抜くには、それが必要不可欠だからだ。多くの発展途上国では電話がない状態から、電柱に固定電話という段階を踏まず、いきなり携帯電話へと発展した。だから、電気についても、いまそれが使えない一六億人の大部分が、石炭を燃やす火力発電所中心のシステムを経ずに、太陽光発電や風力発電のようなクリーンな電気の分配へと発展することを期待したい(P246)。

不幸なことに、これまでは汚い燃料システムの問題を、小さく切り分けて一度に一つずつ解決しようとしてきた。新システムに置き換えようとはしなかった。だから、一つの問題を解決しようとすると、他の問題を悪化させるはめになった(P274)。

私たちが国家として、また文明として、現在抱えているやりがいのある課題は、まさにそれができる-普通の人間が驚異的なことをやれるーようなクリーンエネルギー・システムを開発することだ。クリーンな電気を発電し、エネルギーと資源の全体的な効率を着実に高め、自然保護を奨励する。それが私たちの取り組むべき最大の課題であるのは、エネルギーの需要と供給、石油独裁主義、気候変動、生物多様性の喪失、エネルギー貧困を悪化させず、そういったことを緩和しながら、世界経済を成長させられるのは、そういうシステムしかないからだ。
そのシステムがなければ、解決策もない。政治家が、”再生可能エネルギー”と唱えるのを聞いたら、背を向けたほうがいい。政治家が”再生可能エネルギー・システム”と唱えるのを聞いたなら、話を聞いてもいい(P280)。

自分たちの暮らしぶりを縮小するのではなく、自分たちの暮らしぶりについて考えることで、計り知れない量の石油や電気が節約できる。グリーンはつらくはなく楽しく、より貧しいものではなく豊かなものを提供してくれることを、人々がわかってくれたなら、そのときには計り知れない量の石油や電気が節約できる。先に述べたように、私たちと地球を救うには、ライフスタイルを急激に変えなければならないかもしれない(P293)。

「環境問題に関しては、無関心よりも偽善的なほうがずっといい」(P323)。