『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』
佐藤敦規
読後の感想
佐藤敦規さんの著書『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』は、まさにそのタイトルどおり、50代・60代でも手に届く「地味だけど堅実な資格」で、自立した働き方を目指すための一冊です。
読んでいて強く感じたのは、「資格を取ることがゴールではない」というシンプルだけど大事な真理。そして、“地味”な資格には、“地味”だからこその強さがあるということです。
「資格で稼ぐ」というと、多くの人が思い浮かべるのは、弁護士や医師、公認会計士など、難易度も知名度も高い国家資格かもしれません。
しかし、本書で紹介されているのは、行政書士や社会保険労務士、宅建士など、比較的挑戦しやすい“地味”な資格です。
地味といっても侮れないのが、その「安定感」。
佐藤さんはこう書いています。
地味な資格は「法人相手で安定する」(P.047)
つまり、個人相手ではなく、法人(企業)をクライアントにすることで、収入が長期的・継続的になるというのです。
確かに、社会保険労務士が請け負う給与計算や就業規則の整備、行政書士が担う許認可やビザの申請など、企業の“日常業務の裏側”に欠かせない仕事は、継続契約につながりやすく、しかも単価も高め。
さらには、企業間の紹介によって新たな案件も広がっていく。
これは個人相手ではなかなか得られない、法人ビジネスならではの強みです。
情報を“翻訳”できる存在になる
もう一つ、印象的だったのが、情報の“翻訳者”としての士業の可能性について。
情報を的確に理解できるかどうかは、また別の問題(P.065)
ネットで検索すれば何でもわかる時代。
でも、実際には「調べても意味がわからない」「情報が多すぎて、どれを信じればいいのかわからない」という声が絶えません。
特に行政の制度や助成金、税制などは、用語も複雑で、素人にはハードルが高い。
だからこそ、士業の役割が生きてきます。
わかりにくい情報を、相手に合わせて噛み砕いて説明する。
膨大な情報の中から、本当に使えるものを選び出して伝える。
まるでインフルエンサーのような「情報の編集・翻訳」が、プロフェッショナルとしての価値を生むのです。
資格を取っても、行動しなければ意味がない
資格の取得はゴールではなく、スタート。
ここも本書で何度も強調されているポイントです。
最も稼げないのは、行動しない人です(P.241)
この一言には、思わず「耳が痛い」と感じました。
資格を取ったのに、名刺とHPすら作らない。
会合に参加しても、自分から声をかけずに終わる。
そんな“待ちの姿勢”では、せっかくの知識も宝の持ち腐れです。
特に中高年になると、「失敗しないこと」が美徳として身についてしまい、新しいことに挑戦すること自体にブレーキがかかりがちです。
しかし、独立・開業して食べていくには、ある種の「図々しさ」や「鈍感力」が必要で、それができるかどうかが明暗を分けると著者は語ります。
印象的なくだり
地味な資格は「法人相手で安定する」
では地味な資格は誰を相手に商売しているのでしょうか?
それは法人です。社会保険労務士なら会社の給料計算や助成金の申請代行、行政書士なら会社の許認可や在日外国人の就労ビザの取得代行などを請け負っています。
そして、不特定多数の個人を対象とするよりも、法人を相手にした商売のほうが収入が安定します。その理由は次の3つです。
・契約が長く継続することが多い
・単価が比較的高い
・契約先が新たなお客さんを紹介してくれる
(P.047)。
たしかに、ネットで簡単に情報を得られる時代にはなりましたが、情報を的確に理解できるかどうかは、また別の問題です。実際、新型コロナウイルスにおける雇用対策の助成金も、行政のホームページを見ただけでは理解できないと悩む経営者が多くいました。
くわえて、情報が多すぎて取捨選択できない状況にもなっています。ユーチューバーやインフルエンサーが注目されているのも、「情報の海から有益な情報を選び、分かりやすく伝えてくれる」という魅力があるためです。
この「翻訳」と「編集」という役割においては、今後も士業が担える部分は十分にあるでしょう(P.065)。
まず、もっとも稼げないのは行動しない人です。
行動とは営業活動のことです。オフィスを借り、名刺を作っただけで終わってしまい、まったく営業活動をしないどころか、ホームページさえ作らない人もいます。
士業の会合に参加しても、先輩の先生に「仕事を手伝いましょうか」などと積極的に声をかけることもなく、「仕事を手伝ってくれ」と依頼されても「もう少し勉強してからにさせてください」と断ってしまうのです。
これでは仕事が始まらず、当然、稼げるわけもありません。
おそらく、長年のサラリーマン生活の習性が抜けきれないのでしょう。
失敗しないことをよしとして、ルーティンワークをやっていれば評価される企業もありますが、独立したらマインドを変えなければなりません。
しなければ何も始まらないのです(P.241)。
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