昨日、ちょっと聞かれた話の補足。
<引用>
奈良県田原本町の医師(48)宅で3人が死亡した家族放火殺人をめぐり、少年院送致となった長男(17)らの供述調書を引用した本が出版された秘密漏えい事件で、奈良地検は14日、ジャーナリストに調書を見せたなどとして、刑法の秘密漏示容疑で、長男の精神鑑定をした音羽病院(京都市)医師崎浜盛三容疑者(49)=同市左京区下鴨西本町=を逮捕した。調べに対し「間違いありません」と容疑を認めているという。
地検は、本の著者でジャーナリストの草薙厚子さんからもこれまで任意で事情聴取をしており、刑事責任の有無について慎重に捜査を進める。
この事件では、草薙さん宅や事務所が関連先として、9月14日に家宅捜索を受けた。取材対象者が秘密漏示容疑で逮捕されたのは異例。取材、報道の自由への影響や少年法、プライバシー保護の観点から論議を呼びそうだ。
引用>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071014-00000011-jij-soci
聞かれた疑問。
秘密を漏らした医師が捕まるのは分かるけど、聞いたジャーナリストはどうよ?
秘密漏示罪(刑法第134条)は、秘密を漏らすほうと秘密を聞くほうが必要な犯罪なんだけど、刑法が秘密を漏らしたほうだけ構成要件として規定していることから考えると、秘密を聞いたほうを罰しない趣旨なんだろうと(同様に、わいせつ物頒布・販売罪も、売ったほうは罰せられるけど、買ったほうは罰せられない)。
じゃあ、この草薙厚子っていうジャーナリストは罰せられないか、というとちょっと疑問。まぁ、考えられるのは、医師に執拗に秘密を漏らすように働きかけたとかで、教唆犯とかでは十分考えられるんじゃない?と思う。昨日話した共犯の件は厳しいと思う(別に二人で同一構成要件を充足する行為をしたわけではないので)。秘密を漏らしてはいけないという法益を侵害する行為態様が異なるだけで、難しい問題が生じるんだなぁ、と遠い目。
ただ、秘密漏示罪は抽象的危険犯で、相手に到達すれば「秘密を知ったのか知らないのか」は問題とならないわけで、その意味で言うと、やっぱり漏示したほうを厳罰に処す趣旨なんだと思う。
それにしてもこのジャーナリスト、名前のインパクトもさることながら、結構偏った人だなぁ。理由はどうあれ、この人のやったことは表現の自由を享受するに値する行為とは言えないと思う。
秘密ってのは、知られていないからこそ価値のあるものであって、一度世の中に出てしまったら、取り返しの付かないものである。
ちなみに、秘密漏示罪は親告罪で、今回も長男と父親から告訴されてた。ってことは、やっぱり保護法益は個人的法益なのね(ま、条文の場所からも当たり前か)。
参考にしなくてよいリンク
草薙素子
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E8%96%99%E7%B4%A0%E5%AD%90
草薙厚子
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E8%96%99%E5%8E%9A%E5%AD%90