『となりの億万長者』

「となりの億万長者」
トマス スタンリー
ウィリアム ダンコ

読後の感想
お金持ちになりたいと思い読みました(注意、そういう人はなれません

本書のポイントは、多くの資産家からヒアリングした事実を、解釈して一般化する過程だと思います。

家計予算を立てずに暮らすのは、事業計画、事業目的、会社の方針を決めずに会社を経営するようなものだ。ノース家では税引前所得の少なくとも三分の一を投資に回すようにしている。私たちが取材した年の前年には、所得の四〇%近くを投資していた。ノース家の生活ぶりは、彼らの所得の三分の一しかないような家庭と同じだから、このような芸当ができるのだ(P.102)。

あなたは昨年何にいくら使ったかを把握しているだろうか?もし、知らなければ出費をコントロールするのは難しいし、出費を抑えずに金を貯めることも困難だ。まずは、毎月何にいくら使ったかを正確に記録する努力から始めよう。会計士に家計費目のまとめ方を教わり、独自の家計簿やシステムを作ってもらうのも一つの手だ。それから予算を立てる。毎年所得の一五%を貯蓄に回すことを目標にしてみよう(P108.)。

このように具体的に数値化できるのは、多くのデータの共通項をくくっているからでしょう。

もちろんデータの解釈からの理論なので、突拍子もないことがあるわけではなく、どちらかというと当たり前のことばかりが書かれています。

例えば、

人は、食べ物や飲み物の嗜好、スーツや時計などの身につけるもの、車などで相手を判断するきらいがある。優秀な人は洗練された好みを身につけていると決めてかかっている。しかし、金を貯めて金持ちになるよりも、ものを買うほうがずっと簡単だ。考えて見れば、時間と金をかけて趣味のよいものを身につければ、その分、金がたまらないのは理の当然というものだ。
金持ちの特徴を三つの言葉で言い表せば
倹約、倹約、倹約
である。ウェブスターの辞書で「倹約」をひくと「無駄を省く行動」とある。倹約の反対語は浪費である。私たちは、惜しげもなく、どんどんものを買うライフスタイルを浪費と定義する(P.040)。

とか

資産を築くには、課税対象となる現金所得を最小限におさえ、含み益(現金を伴わない資産価値増加)を最大限にすべきである(P.077)。

もしあなたが経済的に自立したいと願うのなら、明日の自立に備えて今日の消費を犠牲にするような計画を立てるべきだ。一ドルお金を使うということは、税務署に貢ぐ分よけいに稼がなければいけないということを忘れてはならない(P.090)。

など、これを実行することができると安易に考える人には当たり前過ぎて、その実行している(できている)すごさが伝わらないんでしょうね。

この本を読んで、はじめて気付いた視点は、「相続」という点でした。
お金持ちの子供は「銀のスプーンをくわえて生まれる」という言葉もあるように、経済的に豊かだと、子供のやはりそうなるような気がしていました。ところがよくよく考えてみると

経済的援助を与えれば与えるほど子供は資産を蓄えず、援助が少なければ少ないほど資産を築くようになる。
これは統計的に証明された事実である。それなのに、親は自分たちの金を使えば自動的に、子供が上手にお金を貯められるようになると考える。これは大きな間違いだ。自分をコントロールする強い意志、自分から行動を起こす主体性は、車や洋服のように金を出して買うわけにいかないのだ(P.212)。

という側面があることに気がつきました。
また、怖いのは下記のくだり。

親から経済的援助を受ける人は、自分の財産と親の財産を同一視する傾向がある(P.195)。

というもの。まるまる当てはまるわけではありませんが、じっと手をみる(内省中

ともかく、この本は攻め(稼ぐ)よりも守り(倹約)を中心に書かれているため、派手さはありません。
そのため、一読するだけでは「何度も同じことの繰り返し書かれている」程度にしか読み取れないかもしれません。
それは、読んでも実行できないのではなく、実行できるまで読み込みが足りない、からだと考える性質だと感じています。

収入を増やす、は万人向けではありませんが、出費を減らす、は本来万人向けのはずですが、やはり人間は自分に強くないんでしょうね、きっと。

1997年に出された本がいまだに売れ続けて新版まで出ているのは、お金持ちになりたい人が大変多いことと、本を読んだだけではお金持ちになれないことを示す好例でしょう(ちなみに僕は旧版で読みました)。
実行せよ、ということですな、なにごとも。

印象的なくだり

七つの法則
1 彼らは、収入よりはるかに低い支出で生活する。
2 彼らは、資産形成のために、時間、エネルギー、金を効率よく配分している。
3 彼らは、お金の心配をしないですることのほうが、世間体を取り繕うよりもずっと大切だと考える。
4 彼らは、社会人となった後、親からの経済的な援助を受けていない。
5 彼らの子供たちは、経済的に自立している。
6 彼らは、ビジネス・チャンスをつかむのが上手だ。
7 彼らは、ぴったりの職業を選んでいる(P.013)。

タバコの習慣を改めるだけでも、フレンド氏の両親は億万長者の仲間入りをしていたはずだ。収入に比べ大きな資産を持つのだからりっぱな蓄財優等生だ(P.075)。

将来、資産家になりたいと思うなら、住宅ローンは年間の現金所得の二倍以内に抑えること。それ以上の高い家は絶対に買ってはダメ(P.092)。

蓄財劣等生のやり方は、太りすぎの人が理想体重に落とそうと、思いつきで絶食するのと似ている。絶食の後、体重は戻るか、さらに増えてしまうものだ(P.126)。

子供に勇気を持たせるにはどうしたらよいかと尋ねられると、私たちは、売り込みが必要なことをさせてみなさいと答えるようにしている。たとえば学校のクラス委員に立候補するよう励ましてみよう。選挙で選ばれるには、自分を売り込まなければならない。ガールスカウトでクッキーを売ることだって効果がある。物を売るのは、客観的な第三者から評価されるよい機会である(P.218)。

ベス夫妻が援助なしではやっていけないというのは事実だ。しかし、今までの経緯を振り返ってみれば、ロバートとルースがそう仕向けてしまったように第三者の目には映ることだろう。頼みもしないのに多額の金をせっせと与えたために、ほんの数年のうちにベスも夫もやる気を失い、経済的に一人立ちする自信を失い、自立心を失ってしまった。この夫婦が二人だけでどこまでやれるのか誰にもわからない。二人は自分たちの力を試すチャンスを一度も与えられないまま、今日まで来てしまったのだ(P.232)。

資産家の両親がしっかりした子供を育てる場合
1 子供に両親が金持ちだと絶対に教えない
2 どんなに金があろうと、子供には倹約とけじめを教えること
3 子供が大人になり、自己管理ができるようになり、きちんとした職業について安定した生活を送れるようになるまで、親が金持ちだと気づかせはいけない
4 子供や孫に、何を遺産に与えるつもりか、なるべく話さないこと
5 現金や高価なものを駆け引きに使うな
6 巣立った子供の家庭のことには立ち入るな
7 子どもと競おうと思うな
8 子供はそれぞれ違う、独立した人間であることを忘れるな
9 成功でものを計るのではなく、何を達成したか計るように教育しよう
10 子供にお金よりも大切なものがあることを教えよう(P.263)。

私たちはこれから述べる事例を最後にとっておいた。蓄財優等生と劣等生の違いを浮き彫りにしてくれる、よい事例だからだ。この本を通じて、私たちはこの二つのグループがまったく違うニーズを持つことを強調してきた。蓄財優等生は何かをゼロから築き上げること、金を貯めて経済的に自立することを目標にする。劣等生はステイタスの高いライフスタイルを誇示することの重点をおく。この二つのグループが同じ時、同じ場所で出会ったら、衝突が怒るのは目に見えている(P.299)。