『まずいラーメン屋はどこへ消えた? 「椅子取りゲーム社会」で生き残る方法』
岩崎夏海
読後の感想
以前土井英司さんのお話を伺った時
人や企業は、一つの専門性しか持たない場合、競争相手はその分野に存在する全ての事業者ということになってしまう。例えば、音楽業界で考えると、歌手というのは、全ての歌手が競争相手になる。あるいは作曲家は、全ての作曲家が競争相手となる。
仮に、歌の上手さが「一万人に一人」というレベルの歌手だとしても、日本の人口を一億人とすると、ライバルは一万人もいることになる。これでは、競争に勝つのはなかなか難しい。当然、作曲家も同様だ。
しかしながら、歌と作曲、両方の能力を兼ね備えていた場合、話は全く違ってくる。どちらも一万人に一人のレベルであれば、一万かける一万で、一億人に一人のレベルということになるのである。つまり、日本にはライバルがいなくなるのだ。そうして、競争相手のいない、新しい分野を作り出すことができるのである(P.149)。
と同じ内容(ロシア語ver)で、深く納得した覚えがありました。
既存の土俵だけで勝負しないということですね。
印象的なくだり
では、マーケティングとイノベーションが、どのようにして既得権益層と新興勢力との諍いを解決するのか?
それは、こうした理由からだ。
既得権益層と新興勢力との間に諍いが起こるのは、両者が「生き残り」をかけて競い合うからだ。両者はともに、生き残りを図って、相手と反目しあう。
だから、逆に考えると、両者が共に生き残ることができるのであれば、そこに諍いは生まれない。両者が共存できるような社会であれば、諍いや、それに基づく戦争なども起こらないのである(P.54)。
そうしてぼくは、ハッと気づかされた。その行列で本を買っていた人々には、買った本を「自分では読まない」という共通点があった。つまり、彼らは「読者」ではないのである。それにもかかわらず、彼らは本を買っていた――つまり「顧客」だった(P.72)。
ジョブズは、社名から機能に至るまで、とことん捨て抜いたのである。彼は「何をするかよりも、何をしないかの方が重要だ」と語っているが、そうした考えが、アップルを世界一の企業にまで成長させたのだ。その姿は、捨てられずに姿を消していった他の企業と、鮮やかな対照をなしている(P.104)。