『女性たちの貧困』

読後の感想
ありていな言葉を使うと衝撃でした。
この本は、「クローズアップ現代」と「NHKスペシャル」で取材した女性たちの貧困状態を書籍にしたものです。

もちろんテレビ用に一部切り取ってあるんだろう、と割り引いたとしても衝撃の内容だらけ。
ネットカフェに暮らす母と娘二人。母親は派遣で食いつなぎ、上の娘はコンビニでバイトをし暮らしているという。
(下の娘はもちろん 義務教育も行っていない)

普通に考えて、お金貯めて家借りて抜け出せば、とか思ったけど

「貧困」とは「お金がない」だけでなく「教育」や「情報」が欠如している状態だともいえるのではないか、というのが取材を終えての私の実感です。
そして、私たちからは「非合理的」にしか思えない状態にあっても、そこから脱する「努力をする」ということが一部の人にとってはとてもハードルの高い行為なのだということも皆さまにぜひご理解を頂ければと思います(P.213)。

を読んで、自分の不明を恥じました。
そもそも、貧困に固定されるのは「無知」とセットになっているからこそ。
それができれば誰も苦労しないというわけです。

貧困自体はある一定の時期あってもやむを得ないと思うけど、社会制度自体が一度貧困状態になったら
固定されてしまうのが本当に大きな問題だと感じました。
現代の日本の制度だと、しわ寄せが非正規雇用や風俗、妊娠と比較して弱者の女性に全て振りかかってきてしまうのです。
これは自己責任とかいうレベルではありません。

読んでいて背筋が凍るような思いをしたのは、決して他人事ではない事例もあったからです。
父親を小学校低学年で亡くし、シングルマザーの家庭で育った十九歳の女性の例(P.024)。
自分には全く関係ないなんて口が裂けても言えない(書けない)と思いました。

ホント、知らなかった。
(故意の無知かもしれない)

まず出来ることを考えてみた。
NPO Babyぽけっとに寄付しようと思います。
(残念ながら認定を受けていないようでしたので、寄付控除の対象外でしたが)

Babyぽけっと
http://www.babypocket.net/index.php?FrontPage

国税庁サイト
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1263.htm

内閣府NPOホームページ
https://www.npo-homepage.go.jp/

印象的なくだり

デリヘル店の女性経営者は、店で働く十代二十代の若い女性たちの間で、”セブン貯金”がブームになっていると教えてくれた。
仕事が終わって店を出たらコンビニのセブン―イレブンに直行し、ATMでその日の稼ぎを入金して貯金するのだそうだ。
なんのために貯金するのかと尋ねると「老後のため」との答え。
将来の年金崩壊に備えているという(P.105)。

こうした女性たちの存在をカメラで取材し、世の中に伝えたい。
その思いで、東京近郊のデリヘル店に足を運んだ。
取材に対応してくれたのは、二十代後半の若い男性社長の三上さん(仮名)だった。
大学で経営学を学んだという三上さんは、若手企業家のような印象の男性だった。
(中略)
三上さんが、面接で店の規則や就労規則などについて説明する際に使う冊子も見せてくれた。
イラストが主で、すべての漢字には振り仮名がつけられている。
書類を渡しても、読んで理解できない人が多く、こうした冊子を使い始めたようだ。
「ここにいると、日本の識字率が一〇〇%に近いといわれているのは嘘だと感じますよ。スマホのメールは打てたり、一応は字が読めたとしても、文章の内容を理解できない子が多い」と三上さんはいう。
教育をきちんと受けないまま社会に放たれてしまうため、文書を見せられても、よく理解しないままサインをしてしまい、騙されて借金を負う女性も少なくないそうだ。
(中略)
真面目に働く人が多いと、やはりこの店でもシングルマザーは重宝される存在だった(P.108)。

「Babyぽけっと」は、妊娠したものの、自分では育てられない女性たちが産んだ赤ちゃんと、子どもを育てたいと希望する夫婦との特別養子縁組を仲介するNPOだ。
(中略)
「Babyぽけっと」では、出産した後の母親が赤ちゃんと触れ合うことはない。
このルールを知ったときには、あまりにも酷だと感じたが、それには岡田さんの経験に基づく考えがあった。
出産後、母親の精神状態はとても不安定になる。マタニティブルーといわれる抑うつ的な状態になることもあれば、高揚感に満ちあふれることもある。
赤ちゃんと長時間触れ合うことで、出産前の決意が揺らぎ、「やっぱり育てたい」といい出す女性が少なくないのだ。
考えた末に、自分で育てると決めた場合、岡田さんは、赤ちゃんと共に女性を送り出す。
しかし、赤ちゃんへの愛情が芽生えたとしても、「養子に出そう」と考えるに至った生活環境は出産後も変わっていない。
実際、翻意して子どもを連れて帰った女性が数カ月後に「やはり育てるのは無理でした」と連絡してくるケースもあるのだ。
子どもと母親との愛着関係が生まれてから、再び引き離すことは子どもにとっては深刻なダメージにもなる。
それを避けるため、岡田さんは出産後の赤ちゃんとの接触を制限して、女性たちに冷静にこれからの生活を考えてもらうことにしているのだという。
一方で、岡田さんは寮を出る女性たちには最後に一度だけ子どもを抱かせることにしている。
子どもを産んだという事実を、決して忘れないでほしいという思いからだ。
次に子どもを産むときは、喜んで命を迎えられる暮らしをしていてほしい。
「生まれてうれてよかった」と子どもにいってあげてほしい。
そんな岡田さんの思いが、”最後のだっこ”には込められている(P.137)。