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『ユニクロ潜入一年』
横田増生
読後の感想
執念の一冊である。
本書を手に取ったときに自分は強く感じました。
合法的に氏名を変更し、幾度にわたってユニクロに雇われる。
しかも、誰かに迷惑がかからないように一定期間勤めた後は、速やかに姿を消す。
著者は、ユニクロの柳井社長の
マンガ家の弘兼憲史氏による連載企画「『日本のキーマン』解剖」には、「なぜ『ブラック企業』と呼ばれるのか?」というタイトルで、「この10年で売り上げ4倍、成長にこだわるユニクロ流働き方」というサブタイトルがついている。
弘兼氏の、世間ではユニクロに対してブラック企業だとの批判があるという質問に対して、柳井社長は、「我々は『ブラック企業』ではないと思っています。(中略)『限りなくホワイトに近いグレー企業』ではないでしょうか」と答えたのち、「悪口を言っているのは僕とあったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」と語っているのを見つけた。
この箇所を読んだとき感じたいのは、「この言葉は、私への招待状なのか」というものだった。つまり、私にユニクロに潜入取材をしてみろ、という柳井社長自らのお誘いなのだろうか、と思った(P.046)。
の文章を読んで、潜入取材を決意したそうです。
それまで、小競り合いや取材拒否はあったものの、この人をここまで駆り立てるのは何だったのでしょうか?
文体は周知落ち着いていて、あれこれと書きたてるのではなく、事実を丁寧に書きつづるタイプの筆致が、誰にも迷惑を掛けないようにしているのがよく分かります。優しい人ですね。
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印象的なくだり
ユニクロのような大企業や政治家などの”社会的強者”が起こす高額な賠償金を求める名誉棄損裁判は、<SLAPP裁判>と呼ばれ、日本語では、<威嚇裁判>や<恫喝裁判>、<高額嫌がらせ裁判>などと意訳される。
(中略)
ユニクロは裁判に負けたが、しかし文春との裁判終了後、新聞や雑誌に置いて独自取材によるユニクロ記事をほとんど見かけなくなったという点では、ユニクロは言論の委縮効果という、実質的な”果実”を手に入れたように私にはみえた(P.041)。
入ったばかりのアルバイトを相手に、皆が見ている店頭で何度も頭を下げるということは、なかなかできない。これまで、いくつかの企業で潜入取材のためアルバイトとして働いたが、立場が上の社員が、アルバイトの私に対し頭を下げたことは一度もない。
自分の仕事に相当の自信がないと、間違ったときでも、誤ることはできないものだ。
たとえ間違っても立場を笠に着てごまかしたり、知らんふりを決め込んだりするほうが、はるかに楽で、対面が保てるからである。
謝罪の一件でわかったのは、布袋店長が仕事ができるということと、それが人望となりこの店の店舗運営を円滑にしている、ということである(P.108)。
店舗を変えて働くとき、店長が推薦してくれるとは知らなかった。それなら手続きも簡単になっていい。しかし、彼に推薦してもらうと私を面接して採用したのが布袋店長だけとなる。あとで、私がユニクロの体験記を雑誌や書籍で書くとき、彼だけが責めを負うことにもなりかねない。
店舗を変えるごとに、面接を受ければ、複数の面接者がかかわることになる。どの店舗であっても私の潜入取材を、面接の段階では見破ることができなかった、ということになるのではないかと考えた(P.144)。
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