『会社を守るユニオン対策が2時間でわかる本』

「会社を守る!ユニオン対策が分かる本」竹内睦

読後の感想
対立する組織として、大変興味深く読みました。
個人的には労働三権は非常に重要な権利の一つで、正しく行使すればという留保付きですが、大いに賛成の立場ではあります。
しかしながら、その立場を利用した一部の悪質な労働組合には、権利を履き違えているのではないかとい思わざるをえません。
どのような労働組合が正当で、どのような労働組合が悪質か、なんて一概に線引きすることは困難なのかもしれませんが、本書に載っていたような労働組合は、労働組合としての団体性を否定していただきたいなと感じました。

印象的なくだり

正当な組合活動
一般人がやれば犯罪で罰を科せられるにもかかわらず、組合員がやった場合は、本来だったら犯罪なんだけれども、違法性が阻却されて罪にならないということがあるんです。
正当な組合活動はどこまでか?
ただし、そこには正当な組合活動の範囲を逸脱していないという条件が付くわけです。
もちろん暴力などは完全に逸脱した行為であることは明らかですが、何が正当な範囲なのかはすごく抽象的ですよね。
どこまでが正当な組合活動なのか、どんな場合は正当と言えないのか、細かいところで 言えば判断が付き難いのです(P.041)。

で、ユニオンはどんなことでも全部正当な組合活動だと平気で言ってきますし、 逆に会社としては、なるべく縮小解釈をして、ここまでが正当な組合活動であって、組合のやっていることは、既にそれを逸脱しているから、正当な組合活動ではないのだと反論することになります。
それを誰が判断するかといえば、結局は裁判官ということになります。
後は裁判例を参考にすることになります。
例えば、ユニオンのつくるビラがあります。あれは、その書かれている内容が事実かどうかで判断されるようです。
もし事実であったら、ビラに書いていくら配っても、それは正当な組合活動の範囲内だと言われ、労働委員会で争うと、大体、会社にとって分が悪い結果となります。 ところが、事実ではないことや、プライバシーを侵害するようなことを書いていたら、それは正当な組合活動を逸脱しているということになり、名誉毀損や業務妨害、それに伴う損害賠償を問うことも可能になるのです(P.042)。

私が学生の頃は、ビラまきは労働組合のような弱い立場の団体が取りうる安価で有用な多くの人に伝えられる手段だと習いました。
しかしながら、SNSが発達したような現代では、かつてのようなビラまきを認める必要性は小さくなってきたのではないかと思います。
一方で、個人宅にビラを撒くような行為は、他人の敷地に否応なく立ち入っているわけですから、正当性の否定方向に傾くのではないかと感じました。

「まずは団体交渉には応じて、相手の要求を聞くだけ開いて、それに誠実に 回答してください。それが義務です。ただし、組合の要求を承諾する法的義務は、一切ありません」とアドバイスするのです。
最初の例のように、労使間の合意文書の表題が「確認書」「覚書」「議事録」といったも のであったとしても、労使双方が署名または記名押印したものであれば、労働協約とされてしまいます。
労働協約にサインしてしまうと、その後一方的に不利な交渉を強いられるだけでなく、 会社経営の舵取りさえ奪われることになりかねないのです。
(P.076)。

労働協約という名前ではない書面に、労働協約としての効力を認めるってどうなんでしょうね(否定的な主張

団体交渉での議題は具体的に!
団体交渉を受ける以上は、ユニオンに誠実に対応するためにも、団体交渉での議題を明確にしておく必要があります。
団体交渉の議題については、組合と事前に書面で明確にしておき、会社としての考え方を持って臨むようにした方がよいでしょう。
ここでのポイントは、具体的な協議事項を明確にしておくことです。 例えば、「これからの組合員の労働条件について」等のように、抽象的な団体交渉議題 を挙げてくる場合もあるのですが、そんな場合は、いくらでも協議事項が膨らんでしまうことになりかねません。
ですから、「残業代の未払い」、「有給休暇の消化」等、どのような要求をするのか、具体的な項目を事前に明確にしておくべきです。
団体交渉の場において、議題にないことを新たな要求として、突然言い出してきたような場合であれば、まずは事前に文書で要求事項として出すことを求めましょう。
団体交渉の協議事項とするかどうかは、それを見てじっくり検討してから文書で回答する、とすべきでしょう。
相手が何か突然言い出してきても、団体交渉の場で回答できないことについては、社内に持ち帰って検討するということは、まったく問題ありませんので、くれぐれも安易な回答だけはしないことです。
(P.083)。

団体交渉の開催時刻と時間
団体交渉の時間帯ですが、もう既に退職している元社員などが駆け込んだ場合というのは、会社の都合のつく時間帯であれば、いつでもいいと思います。
ところが、在職中の、例えば未払い残業代の請求をしてきたりとか、有給休暇の未消化分はどうだとか、セクハラみたいな問題の場合は、絶対に勤務時間中に行ってはいけまん。
もう既に会社を辞めているわけですから、会社の業務時間中でも、その後でも特にそれをどんどん拡大解釈して、勤務時間中の労働組合活動を認めたのだから、当然、賃金を支払うということも認めているんだと、必ずそう言ってくるんです。 在職中の社員の団体交渉は、勤務時間中は絶対に避けるべきです。
(P.090)。

実感あり、めっちゃ分かる。

ここで注意すべきことがあります。その返事を連絡する手段についてです。
ファックスだけで返信していた場合、そのファックスを受け取っていないとか言って、 わざとらしく当初要望した日に、組合が来たりすることがあります。もちろん、会社は都合が悪くて来られないという結果になります。
そうすると、お得意の「団交応諾義務違反だ!」とか、「不誠実団交だ!」とか言ってくることになります。
ですから、組合への連絡は、ファックスと配達証明郵便でするというのが鉄則です。 内容証明にまでする必要はありませんが、ファックスだけではなく、配達証明郵便で、ちゃんと配達したという証拠を残しておくことが重要なのです。
それから返事の内容ですが、「何月何日は会社の業務上差支えがあって受けられません」 というだけではいけません。必ず代替日を1つ2つ入れておくようにしましょう。そうすると、きちんと誠実に対応したということを会社は主張できます。
もう、ユニオンは何でも言ってきます。代替日を入れていなかっただけで、「団体交渉応諾義務に違反している」とか「不誠実団交だ」とか「組合嫌悪の感情のある回答だ」とか、平気で言ってきたりするんです。
(P.093)。

めっちゃわかる(2回目

会社側は、いくらしゃべっても何の得もありません。あくまでも組合がやりたくてやっているものに付き合ってあげているだけの立場です。質問されたことに必要最小限答えて、後は黙っていれば十分です。沈黙が続くのは、お互いに罰が悪いものですが、それはそれで構わないのです。
そもそもイニシアチブを取るべきはユニオンなのですが、こんなケースもありました。
(P.096)。

ユニオンは、会社の配送業務撤退を見合わせるよう労働委員会に勧告して もらうため「実行確保の措置』を申し立てると共に、団体交渉の開催も要求してきました。
実行確保の措置というのは、労働委員会が組合の主張を認めた場合、主張に基づく勧告を会社に出すものです。
ただし、その勧告には法的な強制力があるわけではありません。
(P.166)。

和解できないとなると、労働委員会の手続き的には、後日、今回の不当労働行為の救済申立てに対する判断(命令)を労働委員会が下すことになります。
もし、労働委員会が、今回のユニオン側の申し立てた不当労働行為の救済を認め、和解案と同等の命令が出たと仮定すると、会社がその命令に不服がある場合は、次のステップ として中央労働委員会に再審査の申し立てをすることになります。
そして、もし、中央労働委員会でも不当労働行為を認める命令が出て、その命令に不服がある場合、会社は命令公布の日から30日以内に、救済命令等の取消訴訟を東京地方裁判所に提起し、その後は、高等裁判所、最高裁判所へともつれ込む可能性もあります。
(P.172)。

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