『清張鉄道1万3500キロ』赤塚隆二著

『清張鉄道1万3500キロ』赤塚隆二著
読後の感想
松本清張の作品には鉄道がよく登場するのは、有名な話である。それは松本清張が乗り鉄だったというわけではなく、時代背景と連載作品が影響しています。たとえば『点と線』が連載されていたのは日本交通社の『旅』という雑誌だったします。
つまり、読書と鉄道の愛好者なら、必然的に松本清張のファンになることでしょう。しかし、この本は単なるファンの域をさらに一歩進んで、全作品の中で登場人物がどの鉄道に乗ったか、そして誰が最初に乗ったかを調査し、それを鉄道地図にまとめた作品なのです。
このアイデア自体は同人誌の域を超えるものであり、それを実際に本として出版するまでのプロセスは前代未聞のものでした。資料の収集、作品への仕上げ、そして構成の難しさが結実した、まさに驚くべき一冊です。解説では酒井順子氏が「松本清張をこよなく愛する人のこと」を「シャーロキアン」をもじって「セイチョリアン」と呼んでいますが、私もその一人として、楽しく本を読むことができました。

本書には、例えば「何々線を最初に乗車したのは『何々』という作品の何某」といった表記が散りばめられています。これを理解するには、当然ながら作品を読んでいる必要があります。なぜなら、この本を手にするような読者は、ほとんどの作品を読んでいることが期待されるからです。もちろん、私もその一人です。

こうした独特のアプローチにより、読者は自ら選択する楽しみが生まれます。率直に言って、この本は面白い試みを実現した結果、素晴らしい作品に仕上がっています。最後の資料編は特に貴重であり、これを大切に扱いたいと感じています。
松本清張が愛した鉄道の世界をこのような視点から垣間見ることができるのは、まさにファンとしての特権です。赤塚隆二氏の『清張鉄道』は、文学と鉄道愛が交錯する独自のエッセンスを持ち、読者に深い感動を与えてくれることでしょう。
この本を手に取ることで、松本清張の作品に新たな解釈を加え、彼の鉄道愛がどれほど深いものであったかを垣間見ることができます。松本清張の世界観と鉄道の融合が、読者にとって興味津々な冒険へと誘ってくれます。

ちなみにこの本は、福岡県小倉市にある松本清張記念館を訪問した際に地下一階の図書室で初めて知りました。興奮のあまり、その記念館を出た瞬間にネットでポチってしまいました。

なお、いうまでもありませんがタイトルの『清張鉄道1万3500キロ』は、宮脇俊三氏の『時刻表2万キロ』のオマージュでしょう。

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