『「できる人」はどこがちがうのか』

『「できる人」はどこがちがうのか』
筑摩書房
斎藤孝

読後の感想
この本に言う「できる人」とは決して頭いいだけの人ではない、というのが率直な感想です。
上達するまでの過程を細かく分析し、上達するタイプの人の特徴をまとめているのは、実践的で非常に参考になりました。特にロジカルにまとめているところが何よりです。確信をもって行動できると感じました。
加えて『徒然草』を読もう、と強く決意しました(笑)。
下に書いてあるゲームは有志を募って是非とも実現したいです。

印象的なくだり

うまい人のやることをよく見て、その技をまねて盗む。これが、上達の大原則である。
こんなことは当然だと思う人が多いかもしれない。しかし、それを強い確信を持って自分の実践の中心に置くことができているかどうか
それが勝負の分かれ目なのである(P019)。

技を盗む力は、「暗黙知(身体知)をいかに明確に認識するか」にかかっている。
これに関して、野中郁次郎・紺野登『知識経営のすすめ-ナレッジマネジメントとその時代(ちくま新書)』は、示唆にあふれている。
この本によれば、「企業の知識の多くが暗黙知なのであり、それをどのように活性化し、形式知化し、活用するかのプロセスこそが重要といえる」ということだ。
暗黙知と形式知の循環するサイクルを作ることが、知識を創造していく上での最大のポイントだという(P028)。

要約の基本は、肝心なものを残し、そのほかは思い切って「捨てる」ことにある(P040)。

「常に確実にできる」ということが、技ということである(P044)。

<質問力>の高さを測る一つの基準は、その質問の裏にある課題意識の強さである。
「そんなことを聞いて一体何の役に立つのか」と思わせるあいまいな質問もあれば、ジグソーパズルの最後の一ピースを求めてくるような明確な質問もある。
自分自身でジグソーパズルをある段階まで苦労して組み合わせてきたプロセスがあってはじめて、一言のアドバイスがパズル全体を完成させる一ピースになりうる(P059)。

最悪なのは、「あなたにとって映画とは何ですか」という類の質問であろう。
そんなことを一言で言えというのは、非常識きわまりない。
「私にとって映画とは愛です」とでも相手に言わせて自己満足に浸るインタビュアーは、<質問力>を鍛える努力を怠っている。
その典型がいわゆるヒーローインタビューである。「今のお気持ちをお聞かせください」「うれしいです」といったやりとりには、新しい意味が生まれる可能性がない(P062)。

相手に「これは話すに足りるやつだ」という感触をもってもらわなければ、いい話はできなということだ。熱く語り合うには、それだけの熱をお互いにもっている必要がある。冷めてる相手を自分の熱で熱くしてまで、語り合おうとするのは、真の教育者しかいない。そして情熱の質を実力は、なされる質問の質ではかられることが多い(P064)。

「自分はいま何のためにやっているのか」ということについての、正確な認識力を育てることが上達の秘訣である(P083)。

自分の頭が他人と比べていいか悪いかということを気にする風潮がある。しかし、それよりも自分の意識の状態がどの程度の活性化にあるかを、こうした比喩によって正確に把握する習慣をつけるほうが、より有効である。自分の意識の状態に対しての意識を、正確に持つ習慣をつけること。
このことが、状態を自然とよい方へ変えていく原動力となる(P154)。

上手に疲れることができれば、上手に眠ることができる。上手に眠ることができれば上手く起きることができる。起きている間に上手に心身のエネルギーを燃焼させることができれば、循環はうまくいく。それが脳の一部だけが疲れきっていたり、身体の一部だけが疲れきるようなアンバランスな疲労の状態では、心身のエネルギーバランスが悪くなる。中途半端に残されたエネルギーは、気持ちを不安定にさせる(P208)。

ぜひともやってみたいゲーム
まず、十人程度のメンバーが円形になり、中央に積み上げられた新書系の本の中からそれぞれ自分が関心があるもの(ただし読んだことのないもの)を選び取る。
そして、三分間でその本に目を通し、各人がその本の要約を言う、というトレーニングである。
三分で一冊の本を要約できるように読むというのは、無理な注文ではある。
しかし、大学でこれを行うと、三分間の間に本の主旨を的確につかまえることのできる学生も出てくる。
つまり、決して不可能な技術ではないのである。たしかにキツイが「やってやれないことはない」技術である(P046)。