『コルチャック先生』

『コルチャック先生』
岩波書店
近藤康子

読後の感想
彼の名前は中学か高校の教材に出てきたのでなんとなく覚えていた程度の認識でしたが、ゲットーの知識がある程度ついている今読むと改めて多くのことを教えてくれました。
コルチャック先生の思想がかなり簡潔に書かれており、入門としては最適な本だと感じました。彼が掲げた子どもの権利の三つの大きな柱「子供の死についての権利」「子供の今日という日についての権利」「子供のあるがままである権利」というのは、かなり先進的だったということが本書を通じてよく理解できました。
最近色々思うところがあって子供のことを考えたりしていましたが、コルチャック先生のような生き方(とまではいかなくても)暖かく見守れる大人になりたいなぁと思いました。

印象的なくだり
「子どもは大人をだませるけれど、子どもは子どもをだまし通せない」(P.049)。

コルチャックは子どもの欲望(何か物が欲しい)は自然なことだと認め、そして子どもたちの”私有財産”をその客観的価値ではなく、持ち主の主観的感情によって評価していました。子どもは、それぞれの思い出のある大切な物を持っています。それなのに、無神経な教師が、子どものポケットがふくらんでいるからといって中身を出すように命じたり、盗んだと勘ちがいして疑ったりすることがあります。ましてや、子どもたちの”宝物”をとりあげてごみに出し、燃やしてしまうようなことは大変野蛮なことです。子どもにとっては二度と手にすることのできないくらい、大切なものかもしれないのですから(P.080)。