『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』

『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』

ランダムハウス講談社
ジョン ウッド, 矢羽野薫

読後の感想
ネットワークの力と一言は表せない、小さな力を集約して大きな流れを作る過程がスリリングでした。離職の瞬間の記述はとても生々しく、悩んでいる様子は、彼も当然ながら一人の人間なのだなと共感して読めました。多くの人間から、少しの善意を有効に生かせる方法とは、一人の人間の情熱なんだなぁ。いい本です。
友人のSに薦められて読み始めましたが本当にいい本でした。
ドラッカーも指摘しているように、これからは地域性ではない個人の嗜好にあうコミュニティに属したい要求が強くなっていくと思います。
例えばNPOのボランティアのような。
そういった団体をどうやって存続させていくのか、という重要な示唆に富んだ一冊でした。無償でいけるのはあくまでも熱意のある人「だけ」だということを胆に銘じなければなりません。

印象的なくだり
ダライ・ラマによれば、僕たちのいちばん基本的な義務は、この地球上で自分たちより「持っていない」人びとを助けることだ。幸運にもいい暮らしができているなら、自分が恵まれていることを知りなさい。貧困のサイクルを断ち切るために助けを必要としている人びとに手を差し伸べることによって、仏に感謝しなさい、と(P023)。

「ポーターは、旅行業界の歴史を通じて、レンタカーを洗車した人はだれもいないと言いました。所有している意識がなければ、長期的なメンテナンスはしないのです。(後略)」(P.105)

慈善活動の世界において、資金集めがいかに軽蔑すべきささいな仕事とみなされ、できるかぎり無視したいと思われているかに、僕は驚いていた。
(中略)
現実を無視しても問題は解決しない。モノを売るたびに損を出していたら、そのビジネスはいずれ行き詰まるだろう。多くの慈善活動は資金繰りに苦労しているが、見て見ぬふりをして、救世主が現れて助けてくれるだろうと思っている。これは悲劇を生むパターンだ(P108)。
よりたくさんの学校と図書館を建設する資金を集めるために、これからも僕は何でもする。ただし、ほかの慈善団体が実際に成果をあげているひとつの方法だけは、意識して避けている。僕が「泣き落し作戦」と呼ぶものだ。
世界に貧困があることはだれでも知っているし、ほぼすべての人がそのことを悲しんでいる。一部の慈善団体は、ハエにたかられた子供や、土ぼこりのなかに横たわっている栄養失調の家族の写真を見せると、寄付金集めに効果があると考えている。実際にそうした活動をしているセレブもいるが、僕に言わせれば、哀れみを利用して寄付者に懇願することは、貧困者をおとしめることになる。そのような写真を見せることは人間の尊厳を否定している。罪悪感をマーケティングに利用してはならないと、僕は思うのだ(P.115)。

ルーム・トゥ・リードのモットーは、「チープ&チアフル(カネをかけずに元気よく)」(P.154)。

NPOのマイクロソフトをめざす
ルーム・トゥ・リードを差別化するひとつの方法として僕が考えたのは、実際の成果を報告し、新しい情報をこまめに伝えることだ。「やろうと思っていること」をはなすのではなく、やってきたことを話そう(P161)。

マイクロソフトでは、「個人を攻撃してはいけないが、アイデアは攻撃していい」といわれている。だれとでも、どんな内容でも議論する権利がある。マイクロソフトの食物連鎖のどこに位置する相手だろうと関係ない(P163)。

マイクロソフトのまねをしたいと思う三つ目の組織文化は、ビルとスティーブの毎日からから学んだ-具体的な数字に基づくことだ。すべては数字に置き換えることができ。すべての管理職は自分の仕事に関する数字をひとつももらさず精査すること。その精神はマイクロソフトに浸透していた。
(中略)
「バルマー主義」で僕がおそれていたのは、「きみは自分の数字も知らないのか」と言われることだった。
(中略)
スティーブの数字攻めは厳しかったが、理由があることはわかっていた。幹部が自分の仕事にどれだけ関心を払っているか、試していたのだ。関係のある数字をすべて確認して、頭にたたき込むくらいの情熱がなければ、データと実績を中心に回るスティーブの世界ではやっていけない(P165)。

「インドや南アフリカなどたくさんの国々に、ブーのような子供がたくさんいるんだ。彼らみんなを助けたい。枠をはめたくない。地理的な範囲でも、大きな目標をもつという意味でも。五000、一万、いや二万の学校と図書館を建てることが、どうして不可能なんだ?たくさんの村が助けを必要としていることはわかっている。いまいちばん足りないのは、現地で活動するチームを増やすこと、もちろん多くのプロジェクトに必要な資金を集めることだ。そこでネットワークが必要になる」
マイケルの答えは簡潔だった。「なるほど、資金が必要なわけだ。どこから集めればいいかを話し合おう。裕福な都市のリストをつくって・・・・・・金の集まるところへ行こう。必要なのは、それぞれの都市で、ものごとの進め方がわかっている人間を見つけることだ。だれもがジョン・ウッドに心酔して、世界を救うために会社を辞めるわけじゃない。でも、十分な収入を稼ぎながら、キャリアのためでなく人生のために何かをしたいと思っている人は何千人、いや、たぶん何百万人といるだろう。きみのような人があと一0人ではなく、週に数時間ずつ貢献できる人が数千人必要なんだ」(後略)(P180)。

(前略)子供に二回目のチャンスはありません。五年待っていたら、五歳の子供は一0歳になります。小学校に行けなかったままになってしまうのです(後略)(P212)。

僕にとってのヒーローとは、戦場と化した国や飢饉に苦しむ国、自信など自然災害に襲われた地域で身を投げだして働く医師やジャーナリストだ。彼らは、過去をコントロールしたり変えたりすることはできないとわかっているが、未来に影響を与えることはできると心から信じている。悲劇に身がすくむのではなく、悲劇をバネに行動を起こす人びとだ(P245)。

世界を変える手助けをするために自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、僕の心からのアドバイスをひとつー考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。
もちろん、あらゆる現実を考えると、このアドバイスを歓迎できないことは承知している。学費ローンの返済が残っていたり、友人や家族に相談しなければならなかったり、まず本格的なビジネスプランを書きたいという人もいるだろう。そうしたことを「いっさいやるな」と言っているのではない。ただ、それに時間かけすぎると勢いを失ってしまうのだ。
最大のリスクは、たくさんの人が、あなたを説得して夢をあきらめさせようとすることだ。世の中には、うまくいかない理由をあげることが大好きな人が多すぎて、「応援しているよ」と励ましてくれる人が少なすぎる。一人で考える時間が長いほど、否定的な力に引き寄せられて取り込まれやすくなる(P247)。

「『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』」への1件のフィードバック

  1. 無償でいけるのはあくまでも熱意のある人「だけ」というのは確かに。加えて、このようなプランの立ち上げが出来るのは、個人の大きな資金的バックグラウンドがあり(彼の場合は役員時代の貯金の取り崩し生活)。
    こういう活動、「立ち上げ」は簡単です。何かを始めるときは人も集まるし、盛り上げて行くのは簡単だけど、果たしてどこを「自分の関わりの最終時点」とするのか。それとも生涯やっていく覚悟なのか。創始者だけでなく、集まって来る人にも「いつまでやるのか」のExitクライテリアの心構えが必要だなぁ、と最近思います。NPOなり自分の興味あるコミュニティに属すのは簡単ですが、卒業条件については悩みます…。だって、サービスを必要としている人たちに終わりは無いんだもの。
    余談ですが、彼が来日の際にはビアパーティが開かれますが、本を数冊持ち込むとチャージが無料になる等のニクい演出がなされています☆

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