『生きながら火に焼かれて』
ソニーマガジンズ
スアド, Souad, 松本 百合子
読後の感想
本当に自分の生きてきた世界の話なのか、空想の世界の話ではないのかと何度も自問自答しながら読みました。それほど今までの自分の知っている常識とはかけ離れた話でした。
「男尊女卑というのもあくまでも文化の一つであり、その世界の中では正当なのだから他の文化のものが口を出す話ではない」と斬って捨てられるような話ではなく、文化に対する考え方も大きく変わりました。特に文化圏の範囲外(この場合だとイスラムに対するヨーロッパ人の反応)は時に予想外の結果をもたらし、慎重に行動せねばいけないものなのだと心底感じました。
平凡な感想ではありますがなにより、日本に生まれた、というだけで幸せなんだと心から思いました。
うちにも娘がいるので、図らずしも重ね合わせる部分があって辛かったです。
印象的なくだり
私たちは、仕事がのろい、お茶のお湯を沸かすのに時間がかかりすぎるといったささいな理由で、日に最低一度は殴られ、蹴飛ばされていた。殴られそうになるところをなんとかかわせることもあったが、それは本当にまれだった。姉のカイナも私と同じくらい頻繁に叩かれていた。常にベルトに監視されているような心境だった。まるで、居眠りしたり道草したりしないよう、棒で叩かれながら進むロバのようだ。棒の動きが止まればロバも足を止める。ただ、私たちのほうがロバよりも激しく叩かれていたことは確かだ。叩かれた翌日も、前日に叩かれたことを忘れさせないため叩かれるのだから(P048)。
知らないことは、なんでも知りたいと思う。私たちとは違う世界のことも理解したい。娘たちにはヨーロッパのこの国で生きられるチャンスをおおいに生かしてほしい。娘たちにこのチャンスを与えられたのはある意味、私の身に降りかかった不幸のおかげともいえる。私が村で叩きこまれた偏狭な考え方にだけは決して娘たちを触れさせたくない。たとえば、鏡のない世界で、きみの目はブルーだと人から言われたら、一生、自分の目はブルーだと信じるだろう。鏡というのは文化や教育、自己および他者の知識を写し出す。私は鏡を見るたび自分はなんて小柄なんだろうと思うが、鏡がなければ横に大きな人でもいないかぎり、小柄であることなど気づきもせずに歩くだろう。知らないというのは、本当に恐ろしいことだ(P248)。
弟は幸いにもふたりの息子に恵まれました。でも、一番ラッキーだったのは彼ではありません。この世に生を享けなかった彼の娘たちです。生まれてこなかったという最高のチャンスに彼女たちは恵まれたのです(P265)。
この本、SMAPの中居さんが前に何かで薦めていて
いつかは読みたいと思っていた本なのよ!
…そう言えば私、最近またちゃんと本を読んでいないなぁ(-_-;