『「事務ミス」をナメるな!』
光文社新書
中田亨
光文社
読後の感想
新書でこれほどの満足度(仕事に反映できるという意味で)の本は久しぶりでした。
事務ミスを「単なるうっかり」として捉えずに、原因究明から解決策までやってしまおうという壮大な目的を掲げながらも、足元から着実に書かれている合計11章はなかなかの傑作です(ところどころに引用されている古典もいい味だしてます
特に実践編の第5章はミスを解決するための考え方についてで、1.しなくても済む方法を考える。2.作業手順を改良する。3.道具や装置を改良する、または取りかえる。4.やり直しがきくようにする。5.致命傷にならないための備えを講じる。6.問題を逆手にとる、とこれらはフレームワークとしても非常に参考になりました。
この著者はミスマニアかと思わんばかりのミスの分類分けとその対応策には本当に驚きました。おそらくとてもコスト意識と効率を大事にする人で、同じ失敗を繰り返したくないという強い気持ちがこんな風な考えを産んだのだろうと思います。
印象的なくだり
過剰適応によるミスを鎮圧するには、訓練を重ねても逆効果であり、一旦慣れたことをリセットして、初心に帰ることが必要です。そのためには、「過剰適応によるミス」と「普通のミス」とを見分けなければなりません。
そこで目を付けるべきは、発生の「系統性」です。発生の仕方に規則性があることを系統性と言います。
建物で案内板が不足していると、顧客は迷った末にそれぞれバラバラの窓口にやってきます。これが「ランダムなミス」です。案内板に誤植があると、顧客は整然と列をなして、しかし間違った窓口にやってきます。こちらが「系統的なミス」です。ミスが系統的ならば、それを引き起こす特定の元凶があるはずだと推定できます(P025)。
正誤の規準を言い表すには、種々雑多の間違いを相手にせず、一つだけ正しいやり方を定義する方が効率的です(P050)。