『短くて恐ろしいフィルの時代』
ジョージ・ソーンダーズ
読後の感想
一番最初のくだりで胸を打ちぬかれてしまいました(比喩
国が小さい、というのはよくある話だが、<内ホーナー国>の小ささときたら、国民が一度に一人しか入れなくて、残りの六人は<内ホーナー国>を取り囲んでいる<外ホーナー国>の領土内に小さくなって立ち、自分の国に住む順番を待っていなければならないほどだった(P005)。
登場人物は抽象的な何かだったり、機械の一部だったりと様々。
その登場人物たちがバランスの取れない感情のまま行動することで話が進んでいきます。
このあたりが、ふわふわした
主人公(と思われる)のフィルは、自分が賢いと思っており、内ホーナー国を徹底的に弾圧します。
その行為の理屈はめちゃくちゃなのですが、他人を上手にごまかしたり、権威を利用することによって正当化していくのです。
このあたりは現実もそんなに変わらないのかなと思いぞっとしました。
途中、残虐性が強調され有る意味グロテスクな描写もあるはずなのですが
いい感じで審判役の第三国が登場するなど、客観性を持たせており
感情移入することなく読めるので、余り苦にはなりませんでした。
神の存在を信じたいかたは是非。
お好きな方は
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