『電子書籍の衝撃』

『電子書籍の衝撃』
佐々木俊尚

読後の感想
2010年に書かれた本書、いまさら読むのも、とちょっとためらっていたのは事実なのですが、本屋さんで立ち読みして即買でした。
本書が書かれた時点では予想、だったことが、いま現実に起こっているような気がします。
この本に書かれていることは、今起こっていることの原因の一つかもしれない。

たとえばバイラルメディアやまとめのこと。
・本を読むという文化が電子化される
・古い本と新しい本が同時に検索される
いわゆるアーカイブ化されるということ。
・そして、無名な作者は検索すらされない。
・ニコ動の歌い手、ユーチューバーのように発見される存在になる
つまり検索してもらうためには、まずはキャッチーな見出しを付けて引っ掛けるメディアの発達。

音楽業界のことから出版業界のことを類推して書かれているので、ピンと来やすい。
・複雑な流通経路がシンプルになり、中間マージンがなくなる
・電子化を制するものは、プラットフォームを作り上げたもの
音楽で言うとiTunesStoreのようなもの
・7つの習慣のコーヴィー博士はすでに電子化に進んでいる
・セルフパブリッシングが発達
いつの時代も、偉大な人は転進をするのが早い。

自分のブログを書こうと思った時の気持ちを思い出しました。
僕が本を選ぶときに(勝手に)参考にする人のブログのように、誰かの参考になれればいいなと思って始めたのがきっかけでした。

食べログにおける、自分と舌が合う人のように、書評についてもインフルエンサーになりたい

最も良い方法は、食べログでお気に入りのレビュアーを見つけるように、自分にとって最も良い本のチョイスをしてくれる人を見つけること。
私はこのような「自分にとって最も良き情報をもたらしてくれる人」をマイクロインフルエンサーと呼んでいます。
小さな圏域でインフルエンス(影響)を他者にもたらす人、という意味です(P.266)。

この本、本当に2010年に書かれたのかと思うほど、いま起こっていることの記述が書かれていると感じました。

実感を持って衝撃を受けたのが下記のくだり。そのとおりかも。

電子化された本は、英語圏では「ebook」と呼ばれています。
あるアメリカ人ブロガーは、こう書いていました。
「昔はインターネットのメールのことを『e-mail』と呼んでいたけど、気がつけば『e』がとれて単なる『mail』になった。
だから『ebook』もそのうち『book』と呼ばれるようになるんじゃないかな」(P.003)。

印象的なくだり

「アテンションエコノミー」という言葉があります。
人間が活動している時間は有限で、だからその有限な時間を新聞や雑誌やケータイが取り合う。
どうやって人々のアテンション(関心)を惹きつけるかが、これからは最も重要なテーマになるということを表す言葉です(P.104)。

個人のお金を取り合っているのではなく、個人の時間を取り合っているので、同業他社がライバルではなく、時間を費やすもの全てがライバルだということですな。

記号消費とは何でしょうか。
これはもともと、ジャン・ボードリヤールというフランスの哲学者が一九七〇年に言いはじめたことで、商品が本来持っている機能的価値とは別に、現在の消費社会ではその社会的な付加価値の方が重要視されるようになっているということです。
たとえばクルマは人を運ぶための移動の道具ですが、メルセデス・ベンツなどの高級輸入車には「高い外車に乗っているセレブ」というような社会的意味が加えられています。
ベンツを買う人の多くは、クルマとしてのベンツを買い求めているのではなく、社会的ステータスとしてのベンツを買い求めている。これが記号消費です(P.162)。

なんクリの世界。

重要なのは、アメリカやヨーロッパでは、本は書店の買い切り制になっていることです。
だから欧米では、無駄にたくさんの本が書店に送り込まれるようなことはありません。
書店が必要とする本だけが注文され、出版社から書店に送られているのです。
ところが日本では、「どうせ委託だから売れなければ返本すればいいから」とバカみたいにたくさんの本が毎日毎日、出版社から取次を経由して書店に集中豪雨のように流し込まれています。
そして書店の側は、アルバイトを雇ってせっせと毎日毎日、バカみたいにたくさんの本を取次に返本しています。
資源の無駄遣い以外の何ものでもありません(P.233)。

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