『禅的シンプル仕事術』

『禅的シンプル仕事術』
桝野俊明

読後の感想
目次は
1.からだを整える
2.禅的習慣術
3.禅的時間術
4.シンプル仕事術
5.人間関係について

禅を通したビジネス書って、あんまり他の物を比べようがないので
いまいちうまく表現できないのですが…
つまるところ、あるものを違う角度のものさしで表現しても限界が有るのでは?ということでした。

本書に触れられている内容は主として「自分はどう有るべきか」ということであって、
圧倒的に自分自身に関しての記載が多いです。

それらは、いま自分が出来る事をきちんとやっていれば結果が必ず付いてくる、という考え方が基準になっているのですが、じゃあそれってなぜ?と思うと、それは禅の考え方だから、になるんですよねぇ。
(それを否定するわけではないのですが)
シンプル仕事術と銘打ちながら、「両親に会いに行く(P060)」とか書かれるとドキッとします。
(宗教って全人格的な介入をしてくるのが余り好きではありません…)

ところで
帯に書かれていた「「足す」より「引く」がビジネス成功への唯一最短の道である」の根拠ってなんなの?

全体的にお説教(本来の使用法)なので、読みやすく、おそらく一時間もあれば読めると思います。
ただ、正しい内容ばかりなので、どれだけ心に響くかは疑問でした。
(それが出来ないから人間は苦悩するのである)

印象的なくだり

食事をいただくときは、一口ずつ味わってください。
そして一口食べたら、一度必ず箸を置くこと。
そうした食べ方をしていれば、絶対に食べすぎることはありません。
厳しい修行を積んできたお坊さんを見てください。ほんとうに美しい姿をしているものです(P.21)。

禅寺の床は、一点の曇りもないほどにピカピカに光っています。
これは雲水とよばれる修行僧たちが、日に何度も磨いているからです。
汚れているから拭くわけではありません。
床を拭くことによって、心の曇りをとろうをしているのです(P.42)。

禅には「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉があります。
ほんとうにいいたいことや伝えたいことは、決して文字では表せないという意味です。
すべてを文字(言葉)に表すのではなく、受けとる側が想像できる余白を残しておく。
これも「包む」ということです。

ここから発展させて、たとえば取引先の会社に書類をもっていくときも、封筒を風呂敷で包んではいかがでしょうか。一枚の風呂敷と封筒の間に、あなたの思いや取引先に対する敬意、その仕事にかける熱意を包む。
それはきっと、相手の心を動かすことになるでしょう。
日本人には合理性だけでは説明のつかない心もちがあると、私は思っています(P.68)。

修行を積んだ禅僧の所作は、とても美しいものです。日々の生活している姿さえ、美しく感じる。
それはなぜか。
禅僧の生活には、一切無駄な動きがないからです。

たとえば衣や食器など、日常使いのものは、すべて収められる場所が決まっています。
使ったあとは、必ず同じ場所にかえす。それが徹底されています。同じ場所に同じものがあるわけですから、物を探すということがありません。あれがない、これはどこにいった。そういう煩わしさもありません。
一般的に人は、探し物に年間約一五〇時間を費やしているそうです。これは無駄というしかありません。その無駄を省くことで、もっと有効に時間が使えるのではないでしょうか(P.97)。

自分の力量に応じたもののみに集中すること。
どんなに魅力的な仕事であっても、かぎられた時間のなかで、できないことは勇気をもって断る。
その一方で、引き受けたものは確実に成し遂げること。
その清々しさが信頼感につながります(P.99)。