『凍土の共和国 北朝鮮幻滅紀行』
金元祚
読後の感想
出版された1984年当時は情報が少なくて
そんな馬鹿な、というような感想だったらしいです。
とにかく北朝鮮内に渡ったことがある人の数少ない情報が
書かれており(おそらく身を守るために書かれた多くの嘘も)
理不尽なことだらけで、読んでいて嫌な気持ちでいっぱいになりました。
印象的なくだり
部屋は殺風景だったが、私がオンドル・パンをみたのはこれが最初だ。オンドル・パンに「祖国」と感じた。私たちが部屋に入ると、ラジオからはすでに有線放送の電波が流れていた。「偉大な首領金日成同志におかれては……」といった調子の電波である。しばらくして私は、静かにしたくなったので、電波を切ろうとスイッチをかざした。だが、このラジオには「ON」「OFF」のスイッチがない。お上が流す電波を一方的に聴くように細工されたラジオだった(P.29)。
だが、いったんそう決意しても、心の中に「こだわり」が残った。朝高では優等生の部類に入っていたが、社会主義祖国のように発展しているところに行って、自分のような者がついていけるかどうかという不安感があった。それで、かれは日本人の「朝鮮訪問記」や「朝鮮訪問談」を熱心に読んだり、聞いたりした。日本人なら第三者的立場で、客観的に共和国のことを書いたり、いったりするだろうから信用できる、そう思い寺尾五郎氏の『三八度線の北』、何人かの訪朝日本人記者が書いた『北朝鮮の記録』など何冊かの本を読みあさった。『北朝鮮の記録』の筆者のひとりに「嶋元謙郎」という読売新聞の記者もいたはずだ、とH君はいった(P.153)。