アメリカ同時多発テロ事件

 もう六年前のことなのか。

 当時、渋谷の法律の予備校に通っていて、その講義が終わって家に帰ったあと、なんとなくテレビを見ていた。確かNHKだったと思う。ユナイテッドの175便が突っ込む瞬間を見た。これって現実なのかなぁと、非現実的なことを思った。

 戦争が始まるのかなと思った。で、なぜか市街地戦を想像して血の気が引いたのを覚えている。

 人生の中で唯一戦争が起こるかもしれないと思った瞬間だった。

『政治家の条件』森嶋通夫著 岩波新書

<引用>
 相手がたとえどんな悪人であろうとも、盗人にも三分の理があるのだから、善悪の間には幅広い灰色の中間地帯が残されているのが常である。
 さらにもっと重要なことは、「正義」の戦いがもたらす効果を慎重に分析しておかないと、極めて望ましくない事態が、「正義」から生じるかもしれない。
 政治家がその可能性を読み落としていたならば、「正義」のための戦いは極めて無責任な戦いになってしまう。
(中略)
 戦争をするかどうかという政治的ギャンブルに際して、正か邪かの観点からだけでなく、予見され得る結果に対して責任がもてるかどうかの観点からも、慎重に検討する必要がある。