『ラーメン屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら』

ラーメン屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら
木村 康宏

読後の感想
もしドラの二番煎じだと正直思ってました(もしドラも読んだことないくせに…
ところが、読んでみてこのような先入観を持っていたことを恥ずかしく思いました。
ラーメンの描写が素晴らしい!!

著者は元船井総研のコンサルで、かつ相当のラーメンフリークだそうです。

ラーメンが食べたくなる描写はさすが。空腹時は注意。
身近な題材で「ああ、あんな感じのお店のことか」と誰もが頭に浮かべることができる点が、「素材選び」の段階で勝ってます。

印象的なくだり

自戒をこめて。自分には備わっているか?ん~。

「いいかい?成功する人には共通して三つの要素が必ず備わっていると言われている。それが、『素直』『プラス思考』『勉強好き』というものなんだ。
(中略)
「でも、勉強には二つの段階がある。一つ目の段階は『なぜ勉強が必要なのか?』がわかること。つまり勉強の目的だ。」(P075)。

改革が始まると必ず現れる抵抗勢力。
力や権力で押しつぶすのではなく平和的解決があるんだなぁと感心。
本能のくだりは「ほんとかな?」と一瞬思ったが、自分に置き換えてみて「そういえば」と思い当たる節もあり。

「そう。蟻の軍団を分析し続けた学者さんがいたんだ。すると、組織的な行動をするように見える蟻には三つのパターンがあるということがわかった。一つはよく働く蟻。もう一つは普通に働く蟻。そして最後の一つは怠け者の蟻だ」
(中略)
「そう、そして、その比率はどの軍団も二対六対二になっていた。『よく働く蟻』二〇%対『普通の蟻』六〇%対『怠け者の蟻』二〇%だ」
(中略)
「その学者さんは怠け者の蟻がいるから組織の効率が悪いんだと仮定して、怠け者の蟻だけをその軍団から取り除いてしまったんだ。どうなったと思う?」
「ということは、もし一〇〇匹なら、怠け者の二〇匹が取り除かれたわけだから、残りのは働き者二〇匹、普通の蟻六〇匹の、合計八〇匹ってことですよね?」
(中略)
「いや、それが違うんだ。残った八〇匹のうちの二割、すなわち一六匹が怠け者の蟻になってしまったんだ。そして、それに合わせて組織全体が『よく働く蟻』一六匹、『普通に働く蟻』四八匹、『怠け者の蟻』一六匹になってしまったんだよ」
「えー!?それって不思議ですね」
「じゃあ、逆に、よく働く組織にしたかったらどうしたらいいと思う?」
「え?んー、よく働く蟻を他から連れてきて、軍団に入れるとか?」
「おっ、正解にかなり近いね。答えは、上位二〇%の『よく働く蟻』をもっと働かせることなんだ。
「ええ!?」
「そうするとね、二対六対二の比率は変わらないんだけど、上位の二〇%につられて真ん中の六〇%がよく働き始めるんだ」
「するとね、下の二割が勝手に脱落するんだ。『こんな組織にはいられない!』ってね」
(中略)
「ただ、動物は生まれもった本能で、適合していない軍団には所属しないし、適合しなくなったら離れていくんだ。だから、当然のことだけど、よく働く蟻は、全体として働かない蟻の軍団には属さないだろうね」
(中略)
「逆に、いい人が次々と抜けていく組織があったとしよう。それはきっと、怠け者の二〇%が過ごしやすいような会社になってしまっていて、逆にやる気のある人たちにとって居心地の悪い組織になっている可能性が高いんだ」(P164)。

いまどんなマニュアルが必要なのかは、その組織がどのような立場にいるか、どのような立場を目指すかによって異なる、という当たり前のことを教えてもらいました。
(いま自分の所属している組織ではどんなマニュアル(形式知)が必要なんだろうか)

「これからリニューアルということになれば、新人スタッフを採用することになります。そのため、ベテランがより良い接客をするためのマニュアルよりも、新人がいち早く太刀屋という店にふさわしい仕事ができるようになるためのルールブックがすぐ必要です」という発表が行なわれた(P204)。

一番響いたくだり。

「求人は究極のマーケティングなんだよ」
(中略)
春香は驚いて聞き返した。マーケティングとはお客様に対するもの、売上を上げるものなのではないの?
「そうだよ。だって考えてごらん。モノを買うときはまだ少し気楽だ。価格にもよるけどね。でも、自分が働く場所、属する場所を選ぶときって慎重になるよね?」
確かに、たとえ一万円であっても、モノを買うときはすんなりと買える。一方で、会費が一〇〇〇円であっても、知らない人と関わりを持つということには慎重になる。逆にお金がもらえるアルバイトや、実質無料の大学のサークルだって選ぶのは相当悩む(P228)。