「見える化」勉強法
遠藤功
読後の感想
ボストン・コンサルティング・グループでコンサルしていた著者が、いかに表現すれば
ビジネスにおいて成果を上げられるかについて書いた本です。
非常に実務チックな表現がたくさんあってこの手の本では久々に真似するところが多い本でした。
例えば、「」のかぎかっこの使い方。
報告書は「記録」であり、プレゼン資料は「記憶」に残らなければなりません。
目的が異なるのですから、伝えたい「メッセージ」の数や表現レベルの濃淡のつけ方、言葉の選び方、センテンスの長さなどが大きく変わってきます(P.204)。
これなんか、思わず「うまいなぁ」と感嘆してしまいました。
また表現の誤りや陥りがちなミスについても経験則からか個別具体的に書かれていて
納得のいくものが多かったです。
うまく言語化できないのでしょうが、著者の言う「筋の良さ」については
ビジネスパーソンといての成功にとって、最も重要なのは、「筋の良さ」です。
「筋の良さ」とは、ものごとの本質を看破し、何が最も大切で、適切かを見極めることです。
論理思考や仮説思考を踏襲したからといって、「筋の良さ」が手に入る保証はまったくありません。
逆に、「ロジック」だ、「仮説」だなどと大上段に振りかざさなくても、「筋の良い」考え方やアイデアを提示し、「筋の良い」議論ができる人もいます。
「筋の良さ」とは、相手が納得するだけの説得力、現実感、迫力が備わっているかどうか、ということです(P.008)。
だけではなく、もう一歩踏み込んだ記載が欲しいところでした。
これだと、「漠然と」理解できているのですが「明確に」なっていないので
いまいち行動に移すことが難しいと感じました。
印象的なくだり
「白地観察」と「基準観察」
「観察思考法」は、観察する対象によって二つに大別できます。
それは、何かを観る際に、何らかの”物差し”を持って観るかどうかの違いです。
何の先入観もなく、まっさらな気持ちで観察することを「白地観察」と呼びます。
一方、ある「物差し」を持って観察することが「基準観察」です(P.049)。
「基準観察」において、最も重要なのは、「基準」そのものよりも、「基準」をもとに「質問する力」だと私は思っています。
質問を投げ掛け、その答えを聴く過程で、様々なことが見えてくるのが、「基準観察」の真髄です(P.060)。
なぜ「ロジック」は間違えるのか?
その答えは明瞭です。
「ロジック」は一つではないからです。
ビジネスの世界において、数学における「1+1=2」のような、誰もが認める客観的、絶対的な「ロジック」は存在しません。
「ロジック」つまり、「理屈」など世の中にいくらでも存在しますし、いくらでも作り出すことができます。
屁理屈も「理屈」です。
同じ事象を見ても、そこから生み出される「ロジック」は見ている人の立場によってまったく異なってきます。
例えば、ビジネスにおいて「消費者の論理」と「供給者の論理」はまったく別物ですが、両方とも同時に存在します。
仮に、人気の高い商品が品切れを起こしているとします。
消費者からすると「すぐに手に入れたいし、買おうとしているのに品切れになるのはけしからん」と考えるでしょう。
しかし、供給者からすれあ、「品切れはかえって人気を煽り、宣伝にもなるから、しばらくは増産しないでおこう」と考えるかもしれません(P.145)。
ビジネスにおけるコミュニケーションは、日常生活のそれよりさらに難易度が高いと言わざるをえません。
ビジネスにおいてコミュニケーションを行う目的は、多くの場合、単なる情報の共有ではなく、そこから一歩進んで、相手を「動かす」ことにあります。
「受け手」が動くことによって、創造や変革を生み出すのがビジネスであり、人を「動かす」ことができるコミュニケーションが不可欠なのです。
人を動かすためには「命令」や「指示」という方法もあります。
軍隊のように、指揮命令系統が厳格に決められている場合は、それも有効です。
しかし、一般的な企業組織内では、「命令」や「指示」だけでは、不十分です。
「受け手」が能動的に動いてくれるためのコミュニケーションが求められます。
だから、より難易度が高いのです(P.184)。
「人を動かすコミュニケーション」とは、「コンテンツ」「メッセージ」「表現」の三つの要素の相乗効果によって達成されるものです。
相乗効果とは文字通り、「足し算」ではなく、「掛け算」です。
どれか一つが欠けていても、全体はゼロになってしまいます(P.189)。