だまされる人の共通点―弁護士が明かす

だまされる人の共通点―弁護士が明かす
主婦の友社
丸山和也

読後の感想
 著者の経験談に基づき書かれているので、分かりやすく、読みやすい本です。
 ただ、本当に役に立つには、5章の「だまされないための交渉術」でした。ここはオススメで、ここだけのために本を買っても惜しくはないと思いました。

印象的なくだり

紹介者がいる場合、紹介者がその人について、ある程度の説明をしてくれる。
たとえば、その人の人柄とか、自分とはどういう関係なのか、という情報だ。
もちろんその説明によってわかる面もあるのだが、その情報はあくまでその紹介者の判断であることを肝に銘じておくべきだ。
100%その情報を信用して、頼ってしまうと危険な面もある。
どのような情報を好材料として評価するかというと、紹介者とその人が何年にもわかって付き合っている場合だ。
他人と長い付き合いができる、そういう関係を築くことができる人というのはプラスの評価をしやすい。
自分が付き合っても、それに準じた付き合いが出来る可能性が高いからだ。
(中略)ひとついえるのは、紹介者が人を連れてくる場合、その人は、紹介者の人間性やレベル、質などとけっこう似たようなものを持っているということだ(P016-017)。

もし、いま誰かと争うことを考えている人は、「争う」ということがどういうことか、よく考えてから行ってもらいたい。
一時期の感情で争いを起こしても、時間と費用だけがかさみ、結果として何も得られない可能性も大きいのである。
それこそが争いの本質なのだから。でも、それを超えても「やる」というのなら、それも酔狂(P091)。

弁護士の考え方にもよるが、1通につき何万円と決めて内容証明だけを出す仕事をする人がいる。
弁護士の名前で内容証明を出すことで、相手に心理的なプレッシャーをかけることを目的としているのである。
弁護士も「お役に立つかどうかわかりませんが、とりあえず、出すだけは出してみましょう」という感じで引き受けているのだろう。
しかし、基本的に私は内容証明だけを出す仕事は引き受けない。あとの責任が持てないからである。
交渉事は相手のあることであり、何か動きが起これば、話がどんどん進んでゆく。
名義貸しのようなカタチで内容証明を出したはいいが、相手から連絡がきらたどうするのか(P120)。

交渉で勝ちたいのであれば、まず自分から相手に攻め込むことである。
それこそが正攻法であり、成功率も高い。自分の側が流れをつくり、主導権を握ることができるからだ。
逆にいえば、いったんできてしまった流れをひっくり返すのは非常に難しいということである(P180)。

戦えば勝つのはわかっているが、本音の部分では戦争はぜひ避けたいと思っている。そこが相手の弱みである。
逆にいえば、弱い立場であるこちらが強くなる部分だ。「戦争を避けさせてやる」それがこちらの強みとなる。
ここをうまく見抜けるかどうか、これこそが生きた駆け引きなのである
(P185)。

交渉は喧嘩ではない。相手を認めるところがないと話が成立しないのだ。少なくとも交渉の過程で相手を「敵」でなくしていかないといけない。
そのためには、「こいつは人間的に愛すべきヤツだ」と思わせるのが得策である。
交渉のうまい人というのは、戦いながらそういうことをしていける人で、ほんとうにすごい。
ただし、気をつけたいのは、失敗談といっても自分の仕事の能力を疑われるような話はしないことだ。
「人柄はいいけど頼りにならない」という印象を与えてはいけない。不安感を与えてしまうからだ。
あくまで、仕事の能力と関係のないプライベートの失敗談が無難である(P192)。

「この問題では自分が不利な立場にいる」「状況がよくわからず準備不足である」など、自分の側に十分な自身や強さがないときは、あまり長時間の交渉をしてはいけない。
「さっ」と行い、できるだけ早く切り上げることだ。ない理由を無理やりつけてでも、その場を離れるべきである。
こちらの態勢が十分でないときに長時間の交渉を行うと、相手に有利な形で形勢が決まってしまうことがあるからだ(P195)。

自分のしたことのペナルティとして慰謝料を請求するのだから、相手が「痛い」と思う金額でなければ意味がない(P210)。

もし、自分がなんらかの事情で慰謝料などを請求される立場になったら、自分から「いくら払います」と金額をいっさいいわないのもひとつの戦法である。
じつはそういう相手こそが弁護士にとっていちばんやりにくいのだから(P212)。