女子と鉄道

光文社
酒井順子

読後の感想
 鉄道に乗っていると、ボックスシートに一人でぽつんと座っている女性がたまにいます。その女性はこんなことを思ったりしているのかなぁと考えながら読みました。
 なぜ鉄道に惹かれるのか、そしてその魅力は何か、などについて面白おかしく書かれています。また、鉄道の中身もほどよくマニアック。この手の趣味の本としては大満足でした。
 「女子はなぜ寝てしまうのか?」は、男性ながら共感できる部分の多い、秀逸の章でした。

印象的なくだり
(前略)私が鉄道に惹かれる理由は、駅と線路という、鉄道独自の設備にあるものと思われます。
つまり鉄道とは、始発駅と終着駅を結ぶ線路の上だけを走る、というところが、私の性に合うのだと思う。
鉄道は私に「移動」という冒険をさせてくれます。しかしそれは全く先の見えない冒険ではない。
行きつく先は絶対に駅で、走るのは絶対に線路の上。知らない駅から鉄道に乗る度に覚える、「冒険をしているのだ」という不安感と、駅と線路が必ず与えてくれる安心感。
両者を同時に得ることができるが故に、鉄道は魅力的なのです(P008)。

(前略)鉄道は、私が何をしようと、いつでもどこかに「連れていって」くれます。
初めて乗る線の始発駅に立って、まだ行ったことのない行き先表示を掲げた列車を目の前にすると、私はいつも、「この列車は、私を本当にここまで連れていってくれるのだなぁ。何だか夢みたいだなぁ」と信じられない気分になりますが、列車は本当に、乗りさえすれば誰であっても平等にどこかに連れていってくれる。
終着駅で降りてもまだ私は「夢みたいだなぁ」と思うのです(P037)。

ま、たいていの鉄道好き男性って、「自分はマニアではない」と必至に否定するものですよね、ええ(P057)。

知識になるくだり
ヨーロッパの駅に共通した特徴ですが、天井が高くて駅舎自体が実に荘厳。頭端式(二本以上のホームの一端がひとつに繋がっている
プラットホーム。上からみると「ヨ」の字に見える。別名櫛形ホーム)のホームがずらりと並ぶ様に、駅の威厳というものを
実感することができる(P065)。

山手線には「外回り」と「内回り」があるわけですが、これは文字通り、環状の山手線の外側を走るか内側を走るかの違い。
外回りが時計回りに走り、内回りはその逆です。
外回りのレールは、内回りよりも二八メートルほど長く、車輪の磨耗に偏りが出ないように、車両は外回りと内回りを、一週間で
同じ回数だけ走るようにするらしい(P178)。

過去に読んだ類似の本と感想
『読んで楽しむ鉄道の本―見たい、乗りたい、遊びたい』所沢秀樹 感想はこちら
『鉄道ジャーナル 2008年05月号』 感想はこちら
『テツはこう乗る 鉄ちゃん気分の鉄道旅』 野田隆感想はこちら