『僕が不動産ビジネスであたり前だと思うことについて』
松岡哲也
読後の感想
読後とは少しずれるが、この方、見た目は派手だけど、商売はとても地味。
簡単に言うと、土地を貸すビジネスをしている人だが、借り手を探してきて建物を建てさせてあげて、とそこまでやって、土地を貸す権利を更に分割して証券化…的なビジネスモデル。
劣化するものには土地を貸さないし、所有権者なので、融資も受けやすい。
元手さえしっかりすればとても手堅いビジネスだと思います。
印象的なくだり
高級ブランドが好むような立地条件であれば、壁や床や外装といった建築上での不備があったりしても、天井の高さでそれらが覆い隠されてしまう。
だから、商業立地で建物を作ろうとする初めの段階では、私は一階部分の天井は高くするよう勧めている(P.25)。
ショーウィンドウの位置で建物の価値が高まるだけではない。その建物の一階に、たとえばエルメスが入るとする。数年後、エルメスがそこを出ていったとしても、次の高級店が入ってきやすいのだ。エルメスが出店するぐらいの立地だったという判断が、高級ブランドの本国の本社でできるから(P.38)。
不動産投資家のやるべきこととは、あくまで日常に即した商業施設が誘致できる投資物件、つまり土地を探すことだろう。
これを見極めるのは、実はそう難しくはない。
たとえば、人が多く住んでいる地域で、幹線道路に面した土地があるとする。そこにスーパーマーケットが出店すれば、ほぼ流行ると言っていい。ただ、見極めるのは簡単だが、そういう土地を見つけるのはとても難しい。
そんな土地を見つけることができたなら投資しなさい。不動産投資家に、そう私は勧める。
買おうとする土地を候補となるスーパーマーケットに見せ、「出店しますか?」と打診する。土地を買い、賃貸借契約をスーパーマーケットと締結する。そんなにむずかしい作業ではない。
最低限の広ささえあれば大型でなくともいい。小型のスーパーマーケットでも、住宅地に隣接し、まあまあ広い道路に面していれば、お客は安定的に入るはずだ(P.86)。
はっきり言うと、私は日本で海辺のリゾートは難しいと思っているのである。
なぜ、と問われれば、とりあえず「蚊が多いから」と答えている。蚊が多いと、オープンエアが楽しめない。オープンエアを楽しめないと、自然にふれにくい。自然にふれにくいと、リゾートにならないのだ。
日本というのは高温多湿で水たまりができやすい。したがって蚊が多い。そのうえ、海辺のリゾートでは、海上からの生ぬるい湿った風が吹いてくる。けっして涼やかではない。ところがロサンゼルスやハワイやイタリアは、海から吹く風がさらさらしている。ああリゾート地に来たと感じる瞬間である。当然、乾燥しているから蚊も少ない。
日本で、海でも山でも気持ちの良い季節は、春と秋だけだろう。それも、本当にオープンエアで気持ちの良い時期は合わせて二か月もないのではないか。
例外は沖縄か。蚊が少ないのでオープンエアが楽しめる。したがってリゾート開発に向いている。乾燥してはいないけれど(P.109)。
「マージャンでも、ゴルフでも、お客様とやるときは必ず勝つようにしろ」
相手に勝たせて気持ち良くさせるより、負けて悔しがらせたほうが、もう一度やろうと何度も誘いに乗ってくれるからだ、と。そのことで相手と何度も会うことになり、やがて仲良くなれるし、その勝負ごとの悔しさは別の場で紛らわせてあげればいいと言うのである。
そのとき、なるほどと思った(P.145)。