『 「超」入門 失敗の本質』

「超」入門 失敗の本質
日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ

 

読後の感想
超名著の「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」を現代組織や会社に置き換えて説明し直した体裁の本です。
最初は、いわゆる二次創作本のたぐいかと思って慎重に読みましたが、ところどころにある「失敗の本質」に対する敬意が読みとれて大変好感が持てました。
具体例も多く読み進めやすいので、初心者にはお勧めです。

印象的なくだり

なぜ、日本企業は一点突破・全面展開なのか?
アメリカでホンダが「小型で気軽に乗れる」という新しい指標(新戦略)を偶然発見したと書きましたが、より正しくは「体験的学習で新戦略を察知した」と言い換えてもよいでしょう。
つまり、「追いかける指標」が先にあったのではなく、体験的学習の積み重ねによる体得(偶然の発見)が生み出した成功なのです。
この事例から類推できることは、多くの日本企業が、ホンダと同様の体験的学習により、偶然新戦略を発見する技能に極めて優れていたということです。
日本軍ならびに日本企業が歴史上証明してきたことは、必ずしも戦略が先になくとも勝利することができ、ビジネスにおいても成功することができるという驚くべき事実です。
これは日本軍にも通じることですが、「一点突破・全面展開」という流れを日本人と日本の組織が採用しがちなのは、戦略の定義という意味での論理が先にあるのではなく、体験的学習による察知で「成功する戦略(新指標)を発見している」構造だからでしょう。
理屈や理論がなくてもそれが売れているのですから、「事実を積み重ねること」、つまり、体験的学習からの積み上げにより、ホンダはバイク革命を起こしました。
唯一の弱点は成功した定義が曖昧なため、売れた商品ばかり販売を続けてしまい、文字通り常に全面展開してしまうことです(P.057)。

勤務先の方針にも通じるところが一部あり、ちょっとだけドキッとしてしまいました(いい意味で

『失敗の本質』で描かれる日本軍には、ある種独特の精強さを放つ要素があります。
それは「超人的な猛訓練・練磨」で要請された技能です。
(中略)
これらは技術的な優位性ではなく、むしろ機械や兵器を扱う人の練成度を限りなく高めた強さです。日本人は「練磨」の文化と精神を持ち、独自の行動様式から、特定の分野で素晴らしい強みを発揮できる民族であると感じます(P.073)。

 

米軍は達人を不要にする「システム思考」によって戦闘方法を転換させましたが、具体的には、相手が積み重ねた努力と技術を無効にするのを理想としています。
同じルールではなくルール自体を変えてしまえば、圧倒的に有利な状況をつくり出せるからです(P.088)。

 

あなたが「知らない」という理由だけで、現場にある能力を蔑視してはいけない。
優れた点を現場に見つけたら自主性・独立性を尊重し、最大・最高の成果を挙げさせる(P.158)。

 

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