『ノマドライフ』

ノマドライフ
本田直之

読後の感想
表紙のあおりには「好きな場所に住んで自由に働くために、やっておくべきこと」とバーンと書かれています。私自身はノマドの生活に憧れているわけではない、と思い込んでいまししたが、本書を読んで、ノマドに惹かれていることに気がつきました。

それは

増やすのではなく、削ぎ落として本当に必要なものを選び、さらに減らしていく時代です。増やすことばかりを追求してきた人たちにとってみると、その「選んで減らす」ことがとても難しいかもしれません。でも、減らすことによって自由度が増し、自由度が増すにつれ、だんだんどこにいても生活でき、どこにいても仕事ができるようになってきます(P.133)。

という働き方に少なからず近づいていきたいと思っているからです。

本書の中も触れられていましたが、きっかけは東日本大震災です。当時都内で勤務していた私は、明日も同じような日が来るとは限らない、と身をもって体験しました。
と、同時に、震災後放射能のリスクがある日本から撤退する外資系の合理的な判断にも憧れをいだいていました。

世の中は変わるのです。そして変わる世の中に合わせて自分も変えていかないといけないのです、という強烈なメッセージを本書は「ノマドライフ」という言葉に置き換えて説いています。

一番いけないのは、不安だからと行って何もしないこと。何も調べず、何も考えず、何も行動に移さず、ただ不安を募らせて足踏みしていたら、毎日が無為に過ぎていきます。不安が嵩じるあまり、リスクヘッジもせずに飛び込むのも危険です。その意味では本書を、不安による思考停止の予防薬として役立てていただいてもいいでしょう(P.171)。

そして、実はノマドライフを実践するのに一番大切なことはベーシックインカム、つまり必要最小限、継続的に入ってくる収入だよ、というのは、非常に納得できる話でした。
自分が資産運用をする際に、インカムゲインに傾いてしまう理由もそれだったのでした。

ちょっと前の本ですが、今の生き方に危機感を抱いている方にはお勧めの一冊です。

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印象的なくだり
わたしたちは多かれ少なかれ、”旧来型のスタンダード”に縛られています。極端な言い方をすれば、企業の都合に”洗脳”されていたようなものです。
会社員を同じ時間に同じ場所に集めれば、管理する側はラクです。たとえは悪いですが、ヒツジを放牧するのではなく、柵付きの牧場に入れておくようなもの。会社の立場に立って考えてみましょう。自分の監視下に閉じ込めておけば、どのような仕事をしているか把握できますし、「遅刻も早退もない」という時間の枠組みを、評価の一条件とすることも可能です。つまり、これまでの勤務体系は、働く人間よりも管理する人間に都合良くできているということです(P.034)。

社内では優秀だけど、それはあくまで「よくできたら会社の仕組みをベースに結果を出す」という能力。オリジナルな試行錯誤をする機会もないので、いくら社内で優秀でも、ヘッドハンティングされるような人材になるのが難しいことがあります(P.068)。

愛社精神に溢れる優秀で若いビジネスパーソンには、「会社を愛するだけでなく、その仕組みから何か学び取る」という貪欲さをもつことをおすすめします(P.069)。

そもそも、社員に完璧に報いてくれる会社は存在するのでしょうか?あったとしても少数派ですし、「がんばったぶん、会社に認めてほしい」と願うのは、自分の成果を他者の評価にゆだねているということです。これは依存につながりますし、他者からの評価が完璧というのは、なかなかない話です(P.099)。

ノマドライフを送っていると、旧来型のスタンダードからすれば「何をやっているかわからない」と思われることも多いのですから、自分がどういう人間で、何ができて、どんなブランドなのか、自ら発信しましょう。相手の方から自分を見つけてくれるケースは非常に稀です。企業に勤めていなければ会社というブランドもないのですから、独自のブランドを作り、セルフメディアで周知のものとしましょう(P.157)。

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