『四畳半神話体系』
森見登美彦
目次
第一話:四畳半恋ノ邪魔者
第二話:四畳半自虐的代理代理戦争
第三話:四畳半の甘い生活
最終話:八十日間四畳半一周
読後の感想
率直に言っておもしろい。文体のリズムが物語の進まない具合と相まって非常に読ませます。
内容は、パラレルワールドチックで、四つの話が平行世界になっています。
第一話の「四畳半恋ノ邪魔者」は、主人公が映画サークル「みそぎ」に入った場合の物語。
第二話の「四畳半自虐的代理代理戦争」は、主人公が樋口に弟子入りした場合の物語。
第三話の「四畳半の甘い生活」は、主人公がソフトボールサークル「ほんわか」に入った場合の物語。
最終話の「八十日間四畳半一周」は、主人公が秘密組織「福猫飯店」に入った場合の物語。
そして、これら全てが最終話の中に集約される構成になっていて
読み手は、その情報が集約される過程を楽しむことができます。
読者に対して、「あれ?この流れ読んだことあるぞ」というデジャヴュを引き起こすために
わざわざコピペで作り、細部を変える手法が採られているため、現代的な文体ともいえるでしょう。
(手書きでは思いつかず、ワープロ、パソコンで書くから思いつく技だと思います)
独白を多用し、決めつけ、敵視、自虐を交える特徴的な筆致と、
あれやこれやの情報量が多い言い回しは森見さんの特徴でもあり、愛すべき文体です。
特に、固有名詞はパワーワードだらけで、「猫ラーメン」、「鴨川デルタ」、「もちぐま」と
これらの単語を並べただけでも森見さんの小説と分かります。
本の感想とはずれますが、本書は長らく本棚に入っていましたが
今回裁断をしてクラウドに入れることによって読むことができた本です。
本は読んでこそ価値が出るのであると、信じて今日も裁断します。
印象的なくだり
「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。
我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」(P.150)。
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