『完全版無税入門』

「完全版無税入門」
只野範男

読後の感想
ふわっとした装丁とは裏腹にきちんと制度の知識がある人が書いた本だなということがすぐ分かりました。
それくらい内容は充実していました。

サラリーマンをしながら副業を続け、結果的に課税所得がマイナスになり、税金がかからない。
著者は長い間この生活を続けている、と記載がありました。
つまりある意味経験値に裏付けられた記載だということです。
文章からするときちんと調べてから実践するタイプのようなので
調べる→実践するのスパイラルで、理解が進み自信が裏打ちされたのだなぁと感じました。

印象的なくだり
「無税」になれたワケ
私の収入は、給与と副業の2本立てです。
2つの所得(給与所得と副業の事業所得)がある場合は、次のような流れで所得税を算出します。
1、2つの所得を合算します。その際、赤字と黒字は相殺できます。
2、合算した所得から各種所得控除を引き、課税所得を出します。
3、課税所得に対応する税率をかけて所得税を出します。
4、課税所得がマイナスになれば、所得税はゼロです。
5、すでに納付した所得税があれば、確定申告をすると還付されます。
(中略)
副業の必要経費としては、家賃、光熱費、通信費、車のガソリン代と維持費などを計上しました。
これらの経費を家庭用と仕事用に6対4で按分し、4割を仕事用とし、画材費全部を足すと副業の必要経費全額がでます(P.031)。

 

私に理解できないのは、スーパーで15円安い大根を買うのに熱心な人が、なぜ税金を安くすることに無関心、無頓着なのかということです(P.052)。

 

1、所得控除を積み上げる
2、必要経費を積み上げる
3、損益通算を活用する
この3つのうち、ひとつでも使えば節税ができます。
合わせ技を使えば、税金はさらに安くなり、行く着く先は「無税の人」の誕生です(P.054)。

 

年末調整は、源泉徴収(天引き)とセットになっています。
このセットは、国にとっては汗をかかずに徴税できる「夢のような制度」といえます。
では、なぜ年末調整が必要なのでしょうか?
理由は、所得税の徴収方法にあります。
所得税はその年1年間の所得に対して課税されます。
当然、1年間の所得は年末までに把握できません。
そのため、年初に「見込み年収」と「見込み所得税」を出します。
会社は見込み所得税を12等分した仮の所得税を毎月、給与から天引きします。
これが源泉徴収制度です。
このように、所得税は前払いの税金です。
一方、住民税は前年の所得に対し課税され、当年6月の給与から天引きされる「後払い」の地方税です。
前年の所得が対象となるため、4月入社の新入社員には住民税の天引きはありません。
翌年の6月の給与から、天引きが始まります(P.065)。

「所得税」と「住民税」の違いがとても分かりやすい文章。
この文章一つとっても、著者がきちんと基本が分かっていることがはわかりますね。

 

たとえば、田舎に住む親が、扶養控除(70歳以上1人につき48万円)の対象なのに所得控除に入れていない人です。少しでも仕送りをするなど扶養の実態があれば、別居していても扶養控除に入れられます。
扶養控除とは、扶養する家族がいる場合、課税前に所得から差し引くことができる「所得控除」ですから、所得税率が10%なら、親1人につき4.8万円、所得税が安くなります。
手続きは「扶養控除異動届」を担当課に提出すれば、年末調整で税金を安くしてくれます。これだけで満足しないでください。
これまで税金を納め過ぎていたのですから、その分を返してもらいましょう。この還付作業は会社ではやってくれませんから、自分で税務署に確定申告書を提出します。
還付申告の場合は、確定申告の時期に合わせる必要はありません。いつでも申告書を提出できます(P.077)。

私が無税になれたワケを説明します。
私のある都市の年収は約500万円でした。
そこから次の所得控除(当時)が引かれます。
・給与所得控除154万円
・配偶者控除 38万円
・配偶者特別控除 38万円
・特定扶養控除 126万円
・社会保険料控除 59万円
・生命保険料控除 5万円
・基礎控除 38万円
合計458万円
約500万円から所得控除の合計458万円を引くと、全額は42万円となり、これが課税所得(所得税の対象となる所得)です。
(中略)
私が副業をしていないサラリーマンであれば、この42万円に当時の税率10%(2007年からは5%)をかけて所得税を算出します。
(中略)
当時の私はイラスト制作・販売の副業をしていましたから、給与所得と事業所得の2つの所得がありました。
確定申告の際には、2つの所得を合算(損益通算)し、課税所得を算出します。
これを総合課税といいます。
まず、私の給与所得は、給与500マネンから給与所得控除154万円を引いた346万円です。
次に副業の事業所得は、イラストの売り上げが50万円に対し、必要経費が100万円かかったので、50万円の赤字でした。
所得の合計は、損益通算をして(346万円-50万円)296万円です。ここから給与所得控除を除いた各種所得控除(先に列挙した304万円)を差し引くと、マイナス8万円になります。
これが2つの所得を持つ私の「真の所得」えす。
確定申告書の「課税される所得金額」欄にはゼロ、これに対する税額欄にもゼロと記入します。なお、申告の際の計算や記入のやり方は、申告会場ですべて教えてくれます。
このゼロ円が、“真の所得税”ですから、源泉徴収された2つの所得税(給与分と副業のイラスト制作・販売分)は1ヶ月後には還付され、住民税ゼロ円も実現します(P.089)。

「会社バレ」を回避する方法
確定申告書には住民税に対し、「給与所得以外の徴収方法の選択」という項目があるので、「自分で納付」(普通徴収)の欄にチェックを入れます。
(中略)
これで市町村から自宅に副業分の住民税の納税通知書が届きます。間違って、「給与から差引」(特別徴収)を選ぶと、市町村から会社に給与所得と副業の所得の合計分に応じた住民税の通知書が送付され、副業が発覚します(P.170)。

アパート経営の必要経費
必要経費として計上できるのは、管理費、修繕費、各種税金、仲介手数料、損害保険料、建物・設備の取得に要したローンの利息などです。
賃貸用マンションのローン返済額のうち、利子の部分は経費として認められますが、元本部分は対象外です。
形状を忘れるものに、物件までの交通費(ガソリン代など)、不動産会社との通信費、打ち合わせの際の手土産代など、つい「見逃してしまうもの」があります。
1円の支出もなく毎年、大きな必要経費になって収益を削ってくれるのが、アパート価格の減価償却費です、
減価償却とは、法定の耐用年数(使用可能期)に基づき、購入物の価値が目減り(減価)した分を、毎年必要経費にすることをいいます。
つまり、建物を購入した年に一挙に経費計上せず、分割でしていくのです。
言い換えると、耐用年数が過ぎた物件では必要経費はありません(P.208)。