『家賃について考えてみたら、収益を上げる方法が見えてきた。』

『家賃について考えてみたら、収益を上げる方法が見えてきた。』
亀田征吾
筑摩書房

あらすじ
不動産管理業者さん(物件を管理することを専門にする不動産業者)が家賃について書いたマニアックな一冊です。
現役不動産オーナー以外が読んでも全く興味が湧かないパワーワードの連続で読む人を虜にするでしょう。
特に106ページから始まる標準家賃からのプラスマイナスの表は圧巻でした。

読後の感想
著者は不動産業者で、賃貸の仲介と物件管理をする業者さんです。
作中にはほとんど売買の内容が出てこなかったので、おそらく賃貸専門なのでしょう。
その専門の業者さんがたくさんある事例の中から、家賃に影響する要素をピックアップして書いたのが本書です。
当たり前そうに見えますが、これはメチャクチャ凄い本です。

当初の希望と実際に決まった物件とのギャップは必ずそれだけの理由があり、そのギャップこそが家賃に影響を及ぼす要素であり、その価値が家賃差として現れているわけです(P.111)。

ということで、借りるお客さん側から要素を抜き出すところにこの本の凄さのポイントがあります。

というのも、物件の家賃を決めるのは大家やオーナーと呼ばれる貸す側なのですが、貸す側は借りる側の希望にきちんと寄り添えていない場合が多いのです。

賃貸不動産を供給する側、つまり新築物件を作るオーナーさんや、リフォーム・リノベーションをしてバリューアップをしようとする側、管理会社として様々な工夫をして空室を埋めようとする側は、プロダクトアウト(作り手がいいと思うものをつくる)の考え方で物事をとらえます。ですが、実際に物件を紹介する側は、マーケットイン(お客様のニーズに合わせて商品を提供する)の考え方で物事をとらえているのです(P.023)。

この一文が理解できないと優秀な不動産屋さんになれないのですよ、ええ。

ところで筆者の持っているCPM(米国不動産経営管理士)という資格、最近よく見るけど持っていると箔が付くんでしょうかね。
習得するのに100万円近くかかるらしいんだけど、その効果は如何に?

印象的なくだり

表面的な事実や根拠のない感覚だけで家賃が曖昧に決められることも珍しいことではありません。それは、誰が悪いとかではなく、何を基準に家賃を設定するのが良いのか、明確なものさしがないからではないかと私は思うのです(P.023)

まったくもってその通り。

築20年を超えた場合、リフォームやリノベーションを行うケースが多々見受けられますが、その場合、安易に資金を投下してあれもこれもと行うのではなく、まずは家賃を下げなければならない要素に重点を置き、資金回収期間も考慮に入れながら行っていくことがより効果的であると言えます(P.106)。

水回りでまず家賃に影響を及ぼす要素として挙げられるのは、お風呂トイレ周りです。
それには4つのパターンがあり、価値の高い順から並べると、
独立洗面脱衣所>脱衣所>脱衣所なし(お風呂トイレ別)>脱衣所なし(お風呂トイレ一緒)(P.122)。

全般的に同意する内容ばかりで珠玉の一冊です。
一棟オーナーには特にお勧めです。

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