|
『東京以外で、1人で年商1億円のネットビジネスを作る方法』
中村あきら
朝日新聞出版
読後の感想
この手の本の中では、めったに言わないけどいい本です、これは。
特筆すべきは何かと言うと、少人数で運営するネットショップで成功する→社員30人くらいの組織にする→失敗して組織崩壊→また少人数で繰り返す、という稀に見る珍しい流れの本なのです。
つまり、普通の本が経験することを一周半しており経験値たっぷりなのです。
更に、苦労しているだけあって、本の中にあちこちに重みのある言葉が続きます。
友人のような関係性を従業員に望む若い経営者は多いと思う。
年功序列とか、学歴・経歴といった昔ながらの価値観に根差した、
上下関係や派閥などから自由になって、仕事がしたい、ビジネスをしたいと考える気持ちはぼくもよくわかる。
ただ、倒産の危機、訴訟問題、社員の給与保証など現実に危機に瀕してみてわかったのは、
窮屈でつまらないと思っていた、誰が望んでこんなふうにしたんだろうと
理解ができなかった日本の職業環境や仕事観は、法律や制度に最適化した結果でき来あがったものだということだった。
どんなに、自由や対等を望んでも、日本で仕事をする限り、
経営者と従業員の間には越えられない壁があり、それは「責任」という点で顕著に表れている(P.187)。
他の人がどれだけ、初期投資はするな、とか、人件費は掛け過ぎるな、と書いていても、
この人の書き振りほどは響かないと思います。それほどこの失敗の経験が大きい。
本を読んでいると、文章のあちこちに「分析」をすることの大事さがにじみ出ています。
印象的なくだり
あなたがもっとも優先したい「好きな場所に住んで収益を得る」=「場所にしばられないビジネス」とは、具体的には次のような状態のことだ。
①どこにいても業務ができる(たとえば旅行中でも受発注ができるなど)
②決められた出社日数がない(スタッフは少ないほどよい)
③仕事のために定期的に誰かに会いにいく必要がない(営業活動は不要が理想)また「場所にしばられないビジネス」を考える際、決して選んではいけない条件は、以下のようなものである。
①人間関係に利益が依存するビジネス(対面ルート営業が必須な業態)
②リアルの場において収益がもたらされるビジネス(講演、イベント主催など)
③リアル店舗などのビジネス(レストランやカフェ)
④自分以外の雇用主が発生するビジネス(人材派遣業など)(P.019)。
10倍にするという思考はとても物事をシンプルにしてくれた。
アクセスを10倍にするか、成約率や客単価を10倍にするか、ぼくの作業時間を10倍にするか、作業する人を10倍にするか、そういったさまざまなものを10倍にすると考えるようになってようやく現実が見えてくる。10倍にできるものはそれほどないということい気づくのだ(P.040)。
メーカー直送するのも、在庫をもつのも卸値はほとんどの場合で同じだ。
在庫をもたないからといって卸値が高くなるわけではないのだ(P.064)。
1つのサイトをそのまままねしたら問題になるが、3つのサイトの各部分をそれぞれまねしたら、できあがった時には、まったく別のサイトになる(P.081)。
商品を選ぶ際に大切なのは、売り上げの方程式の「アクセス・成約率・客単価・リピート率」、このどれかが飛び抜けている可能性があるものを選ばなくてはならない。
この商品を扱うことで、アクセスが上がるか、客単価が上がるか、成約率が高まるのか、リピート率が上がりそうか…公式のいずれかの項にインパクトがあるものを選ぶ。
すべてのおいて、中途半端な商品が一番悪い。
どれか1つでも0点というものは論外だ(P.110)。
成功の事例は、多種多様だ。それはなぜかというと、経営者が自分でこれが成功要因だと語る場合に、自分のブランディングの上で語る場合があったり、実際には意識しないながらもそえを行っているケースが多いからだ。
(中略)
しかし、失敗事例は明確だ。それは、数字によって他人が分析できるからだ。
成功事例が、主観的で偶発的な要素が多いのに対して、失敗事例は客観的に事実を評価できる。ネットショップの失敗事例を調べると、ほとんどが以下の3つに集約される。
①人件費のかけ過ぎ
②広告費のかけ過ぎ
③在庫の数字把握、管理ができていない(P.159)。