『ジャパニーズ・ドリーマーズ―自己イノベーションのすすめ』
PHP研究所
米倉誠一郎
読後の感想
現状の閉塞感を打破したい、との思いが強く伝わってくる内容でした。幾つかの成功例を挙げて、次に続けとばかりの文章は勇気と活力を与えてくれます。
ただ盛り込みすぎたためか一人一人の記述が薄いのが残念。興味を持った人がいれば、その人に焦点を当てた本を再読すべきでしょう。
印象的なくだり
小城武彦
「自分と会うことで、相手が得をすると思わなければ、会ってもらえないと思ったからです。」(P050)
すなわち、ナイキでもポロでも小さなロゴやマークが商品に大きな付加価値を生むため、多くの人はあのロゴをブランド力と勘違いする。
しかし、ブランド力とはああした小さなロゴを付加価値にする経営力、すなわち商品管理能力、マーケティング力、価格決定力、社員教育力、オペレーション能力、コミュニケーション能力など経営全体の力だというのである。
そう考えると、ルイ・ヴィトンがロエベやクリスチャン・ディオール、ヴーヴ・クリコなど多角化する意味が理解できる(P153)。
もう一つ重要なことがある。それは、昔はノウハウ(know how)が大事だといわれたが、最近はノウフー(know who)の法が大事になってきていること(P176)。
大事なことは、もうはっきりした。やるか、やらないか。
やらない人は永久にやらない。そして、はじめたら絶対に脱落しない。この精神がいまの日本には不足している(P184)。
僕の恩師である野中郁次郎教授は形式知と暗黙知の循環が新たな知を創ると提唱した。
形式知とは、マニュアルなどで文字・言葉で共有できる知識。暗黙知というのは、経験や文化さらには文脈によって形成される言葉には出来ない知識。
人は形式知を蓄積するだけではダメで、必ず暗黙知も蓄積していかなければならない。
eメールは非常に便利なツールだが形式知しか生み出せない。会議は古い制度だが、暗黙知を生み出すことができる。
日本の強さはこの暗黙知共有にあった。ただし、同じメンバーが集まって、同じようにやっていたのでは、お互いがなれあい、会議の質もそのチームのレベルも低くなる。
解決方法は二つしかない。異質なものを入れるか、個人が能力をジャンプさせるか(P258-259)。
松井道夫
この超低金利時代に、お金を上手に運用して殖やしたいと思っている人はたくさんいる。
でも、自分ではどうすればいいのかわからない。そんな人たちのために、本当に親身になって考えてくれるアドバイザーはいないのか、と。
松井いわく、「いない」。
「どんな金融機関も所詮は、他人のお金を取り扱っているに過ぎない。本人以上にその人の資産を考えることなどできない。
だから、自分のお金は自分で考えるしかない。そのためには、どうするのがベストか、自分で勉強するしかない」(P278)。