『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』
光文社
勝間和代
読後の感想
別の経済の本を読んでいて、書評に参考図書として挙がっていたので読んでみました。
以前、自己啓発系でひどい目に遭っていたので(笑)、身構えていましたが、経済の本は流石に分かりやすかったです。
なにげに実行しやすいことを中心に書いており、他の本よりは丁寧なつくりだと感じました。
ただ、この本のメッセージを正しく受け取らないとたいへんなことになるのは間違いないようです。生兵法は怪我のもと。
リスクの分散については、もっと丁寧に書いてほしかったです。
印象的なくだり
株式投資は主にファンダメンタルズ分析とチャート分析によって行われます。ファンダメンタルズ分析とは、企業の業績や株価などを用いた投資指標によって株価が割高か割安かを分析すること、チャート分析とは、チャートパターンやテクニカルチャートを利用することで株価動向を分析することです。
(中略)
会計利益の将来期待の大きさの割に株価が安い会社に投資することは、統計的には勝つ可能性が高い「投資」(リスク)になりますが、チャート分析を使って株式投資をすることは単なる「賭け」(危険)になります(P049)。
「円の金利の標準は国際の金利で決まる」「金利は通常、期間が長くなるほど
高くなる」「信用リスクがあるところの金利は、国際の金利よりも高い」という三つの基本的なポイントを押さえておけば、なにか特別な理由がない限り、不利な定期預金にお金を預けることは少なくなると思います(P072)。
借り主である私たちにとって分の悪いものがなぜそれでも成り立っていたかというと、これまえは投資した住宅が購入価格以上に値上がりしていたため、負債側が多少の利ザヤを銀行に支払ったとしても、資産側のリターンがそれを上回ることによって問題とならなかったのです(P096)。
一般的に買ってはいけない住宅の最たるものが、新築マンションです。特に、大規模な宣伝を行っているような大型分譲の新築マンションは注意をしてください。
新築マンションをなぜ買ってはいけないかというと、新築には必ずその建築業者の利ザヤが多く乗っているためです。購入価格のだいたい20~30%ぐらいは、その新築マンションの広告費や粗利益であると考えていいでしょう。したがって、新築マンションー例えば4000万円のマンションだとしたらーを市価で転売しようとした瞬間に3000万円前後でしか売れないような、買った瞬間に値が下がるケースが多いのです。新築マンションはその1000万円分の儲けで、モデルルーム代やチラシ代、セールスマンの人件費までまかなっているのです(P100)。
電車広告は費用対効果が図りにくいため、比較的宣伝費に余裕のある企業によって行われているのですが、電車広告を見渡してみると、中吊り以外のドアの上にあるような長期契約な必要な広告については、住宅、消費者金融、それに教育関係によって多くのスペースが占められています。費用対効果が分かりにくいにもかかわらず、なぜそれだけ大きな広告費を使えるのかといえば、それだけ使ったとしても儲かるものだからです(P106)。
住宅ローンは、銀行や政府、住宅メーカーが、それを組む人を必要とするから煽るのだという説明を前にしました。これと同じように、株式なども、証券会社や機関投資家が個人投資家を必要としています。なぜなら、損をしてくれる人、つまり”カモ”がいないと機関投資家が得をできないためです。したがって、こうした「○○○○で簡単に儲かる」といった本が多く出回っている背景には、すぐに儲けたいと思う個人の弱い心を利用して、それを煽ることで儲けようとしてる構造があるのかもしれません。いずれにせよ、そんな簡単に儲かるのだったら、たかだか1000円か2000円の本でそのノウハウを教えてくれるはずがないという考え方が健全だと思います(P128)。
債権と株式、どちらの方が、今後リターンがよくなるかということについては一概にはいえません。歴史的に見て、過去20年くらいは株式のリターンが債権のリターンを上回ってきたため、逆に債権の方が株式よりもリターンが高くなることが統計上は考えられます。ただ、分からないときには、ほぼ同額を分散するのが一番リスクが少ない方法になります(P177)。