『好き嫌いで人事』

『好き嫌いで人事』
日本実業出版社
松井 道夫

読後の感想
こんなことを実行できるの?という疑問を次々に解決していく。
正直「一緒に仕事したいか?」と自問自答した。答えは出ません。
自らの弱みと強みを知っている、という信念は自分も同じでこうなりたい。
この人の強みは、行動力と不確定なものを決断する力。自分にはない。
すごくいい本、タイトルで判断してはいけない。

印象的なくだり
社員の意識が、会社の外にではなく内に向かい始めるー。大企業病とは、つまりそういうことだと私は思う。一度、外部ではなく内部に向かってしまった人間の意識は変わらない。外部の競争ではなく、内部での競争だけに目がいってしまうのである(Pはじめに)。

旧世界においては、供給者たる企業は、消費者たる顧客に対して、カスタマーズ・サティスファクションなどの理屈を盾に、実質的な顧客囲い込みに没頭してきた。だが、そもそも、顧客は自ら囲い込まれたいと思う存在ではない。自らを中心とするネットワークを構築することにより、主体的にサービスを選択できる情報と手段さえもつようになれば、当然、企業と消費者の力関係は逆転する。顧客の復讐、顧客による「良いとこ取り」が始まるのである。これが情報革命の本質である(P063)。

日々一緒に働いている者同士が評価し合うのだから、上辺だけ格好つけても、すぐに見透かされるだろう。仕事をしているフリをしていても、真実はみんなが見ている。八方美人でも、それをやり抜くことができるのであれば、それはそれで立派な実力である。仕事ではミスばかりしていても、それでもみんなに愛されているというのであれば、松井劇団にあって、それなりに必要な潤滑油なのかもしれない。反面、どんなに仕事ができても、なぜか同僚たちに嫌われているというのであれば、やはり「総合的な人間力に欠ける人物」であると見なされてもやむを得ない(P159)。

その頃から、私は決断の本質がわかってきたような気がする。決断の本質は捨てることである。加えることでは決してない。引き算の決断である。足し算の決断ではない。
捨てる行為というのは、ビジネスに限らず世の中すべて、過去を捨てるということだと思う。過去に築き上げてきたものを捨てるのである。
過去にやってきたこと、築き上げるための努力というか、どれだけしんどい思いをしてきたのか知っている。捨てる痛みがわかっている。また、過去にこうやって成功したからというノウハウが蓄積されている。そのノウハウに則っていれば得られるものも大体計算できる。
そういった過去に関わるものを捨てて、では、得ようというものは何かというと、未来のことだから、やってみないとわからない。にもかかわらず、わかるものを捨てて、わからないものを得ようとする、ないしは、計算できるものを捨てて、計算できないものを得ようというのだから、みんな反対するに決まっている。要するに、リターンがまったく見えないようなリスクを取ってどうする・・・というわけである。
捨てずに何か加えてやろう、足してやろう、ということであれば、みな反対などしない。自分たちが失うものは取りあえずないし、「そうですね・・・。ひとつ、やってみましょうかねぇ」となる。
捨てる決断はみなから反対され、実行はきわめてむずかしいが、それが結果的に正しい場合に、得られるものは凄まじく巨大である。一方の加える決断は、みなが賛成し、行うのは容易であるが、正しくても、得るものは大して大きいものではないし、大体が失敗する
(P215)。

知識になるくだり
企業が(発行会社)が株式を新規公開するに際して、複数の証券会社が引受幹事団を形成する。引受幹事団の中身は大雑把にいって、新規公開企業の審査・助言を行なう主幹事証券会社と、株式を引き受けて販売する幹事証券会社の2種類がある。
引受業務とは、発行会社が公募や売り出しする株式を、投資家に対して責任をもって販売することを保証・引き受ける業務のことだ。したがって、主幹事証券会社にはその発行会社を審査するという、高度な鑑識眼が求められる。また、仮に引き受けた株式に売れ残りが生じた場合は、売れ残りの株式を、引受証券会社が自己資金で引き取らなければならない。であるがゆえ、引受証券会社には、引き受けた株式を多くの投資家に広く販売できる販売力も備わっていなければならない。
引受証券会社は、一連の「力技」の見返りとして、引受手数料を受け取る。とりわけ、引受シェアの大きな主幹幹事証券会社ともなれば、莫大な金額の引受手数料が入ってくる。
そして多くの証券会社においては、引受手数料こそが最大・最重要の収入源となっているのである(P098)。

「『好き嫌いで人事』」への2件のフィードバック

  1. タイトルで首をかしげましたが、著者を拝見して納得しました。
    「松井劇団」に入った先輩がいらっしゃるのですが。
    その先輩から聞いた、「松井劇団」の最終面接の話を
    就職活動を目の前にした学生に、よく話してます。
    それから、アンダーライティング業務のお話。
    必死になって募集株式の発行等に関する規定(特に株式の申込み・引受け)を
    理解したローの学生さんたちに
    「まあ、実際には上場会社の場合は総額引受けばかりなので、
    必要なのは205条です」と言い放って
    毎年悲しい思いをさせてたのを思い出しました…。

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