『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』
デビッド・アレン
二見書房
読後の感想
以前出版された「ストレスフリーの仕事術」(以下、「仕事術」)の続編的位置づけにも関わらず、体系的な位置づけは前段階という不思議な出版の仕方。まぁ、出版社も変わったことから「大人の事情」があったのかしらん。
と、そんなよしなしごとを吹き飛ばすように内容は非常に良かったです。当たり前ですが基本的な考えは「仕事術」と変わらずというか同じ。まずは頭の中にあるモヤモヤを可視化して、「収集」 する。そしてそれをやる必要があるのかという視点で「処理」し、やるシチュエーションに合わせて「整理」する。あとはレビューと実行という文字にすると簡 単そうに見えますが、実行するのは相当難しいです。そしてそれを継続するのも相当苦労するはずです。
というのも僕が「仕事術」を読んだのは2007年でしたが、それから現在までまがいなりにもこの方法を続けてました。
しかし、いつの間にかその体系は崩壊し、いつのまにか不完全な形となっていたことが、この本を読んで明らかになったからです。
誤解を恐れずに断言するならば、本書に書かれた方法を不完全に実行するくらいならやらないほうがなんぼかましかもしれません。
というわけで、後悔の念を隠しきれないまま読み進めましたが、どこが問題だったのか?がはっきりと分かり、非常にためになりました。
ちなみに僕の弱点は「やるべきこと」を限定しなかったことでした(別にやらなくてもいいことを「やるべきこと」リストに追加していたために、仮にそのリストが実行できなかったときも「ま、いっか」と思ってしまっていたのです。その結果、「やらなければならないこと」ができなかった時も、「ま、いっか」になっていました。はっきり言って最悪です・・・。
この本を読み、齢33にしてようやく自らの器が分かってきました。そんな訳でいい本ですが「仕事術」と一緒にセットなら効果抜群です(実行できたら)。
印象的なくだり
あなたが日頃やっていることは、ふたつに分けることができる。ひとつは、興味があったり重要だったり、何かの役に立ったりすることだ。
もうひとつは、やりたくはないがやらなければならないことである。前者の場合は、費やした時間とエネルギーに応じた結果をあげたいと思うだろう。
後者については、さっさと片付けてほかのことをしたいと思うに違いない(P011)。
私は何かの意思決定をするとき、「事前に考慮された」選択肢から直感を信じて選ぶようにしている。
その場で「どんな選択肢があるかな」と考えたりはけっしてしない。その場で考えつく選択肢だけでは正しい優先順位で行動しているとは言えないからだ。
すべて事前に考慮しておき、信頼できるシステムに整理しておくべきなのだ。その場その場で何度も考えるのは時間のムダだ(P041)。
具体的な行動の判断を「今は重要でないから」という理由で先送りにしていれば、それが「解決していないこと」となってエネルギーが奪われ、日々の生活や仕事で重要なことに集中できなくなってしまう(P045)。
何かを「しないといけない」と思った瞬間から、それは「済んでいないこと」になる(P046)。
行動を起こす必要がないもの、つまり答えがノーのものは、次の3つのいずれかである。
1.現時点では無価値で、もう必要のないもの(ゴミ)。
2.今やる必要はないが、いつか行動する必要が出てくるかもしれないもの(保留)。
3.あとで必要になるかもしれない情報(資料)。
(P054)。
整理できていないことを一気に集めるのは大変だと思う人もいるだろう。
ほとんどは”それほど重要ではないこと”なのに、収集する意味があるのかと疑問に感じる人もいるかもしれない。
しかし、そのような意識があるからこそ、それらは放置されてきたのである。
最初に気づいたときに緊急性がないと感じ、今でも大きな問題は生じていないせいで、まだ片付いていないわけだ(P108)。
処理は闇雲に時間をかければいいというものではない。必要なのは、内容を吟味し、どんな行動が必要なのかを判断することだけだ。
ひとつ残らず「処理」を行い、inboxをできるだけ早く空にすることが目的になる(P130)。
行動ステップを完了しても「やるべきこと」が終わらないときは、まだ行動が残っていることを示す目印を残しておかねばならない(P147)。
カレンダーでTo Doリストを管理してきた人の多くは、それまでの癖で、月曜なら”月曜日にやりたいこと”をカレンダーに書いてしまう。そして、そこには絶対に月曜にや らなくてはならないことではなく、火曜日以降にずれ込むかもしれない行動まで書きこまれてしまうこともある。そのような誘惑にはくれぐれも気をつけよう。 カレンダーは「聖域
」であり、その日に絶対やるべきこと以外を書いてはいけない(P154)。
「いつかやる/多分やる」と「あとで判断するまで保留」は大きく違う。たまに「あとで判断しよう」というものを「いつ かやる/多分やる」リストに片付けて安心している人がいる。しかし、そこに置いているだけだ。このようなやり方はお勧めできない。私の経験ではそのような 人は、ほぼ例外なく、”判断”をせず、積み上がったものから手が遠のいていくからだ(P184)。
すべてのやるべきことを把握したうえで、入ってきた仕事をほかの仕事より優先させるなら、何も問題はない。それが最善 の行動だからだ。しかしほとんどの人は、すべての「やるべきこと」について求めるべき結果と次にとるべき行動を明らかにする作業をしていない。やるべきこ とが曖昧なまま、とりあえず緊急性が高そうに見えるものばかりやっていると、ストレスはどんどん溜まる一方だ(P216)。
ボトムアップがうまくいく最大の理由は、現実に関して頭の中が整理され、自分にとってより大きな意義のある目標や、漠然とした将来像について考えやすくなるからである(P222)。
現実社会では、約束を破れば信頼を失うというペナルティが待っている。人間関係にとってマイナスの結果が生じるわけだ。
それと同じで、inboxに入っているものは、あなたがあなた自身に課した”約束”である。その約束を破ったからこそ、嫌な気分になったのだ。自分に対する信頼が損なわれたのである(P250)。
私たちは誰もが、”できる”人間になりたいと願っている。簡単にできることから片付けて、自信をつけていこう。最初はリストになかったものをやって、あとからリストに入れて完了扱いにした経験のある人には、私の言いたいことがわかるはずだ(P253)。
すべてを頭から追い出して目の前に置くことで、気分がよくなるのはなぜだろう。それらを眺めて、対応を考え、その場で 実行したり「今はやらない」と判断したとき、あなたは自分に対する約束を見直している。それが、気分のよさにつながっているのだ。ただ、約束自体を思い出 せなければ、それを見直すこともできない。多くの人が抱えている問題はそこにある(P255)。
人がグチをこぼすのは、改善できる見込みがあると思っているときだけである。次の行動を問うことで、そこが浮き彫りに なる。現状を替えられるなら、変えるための行動があるはずだ。変えられないことは、動かない現実として戦略や戦術に組み込むしかない。グチが聞こえてきた ときは、変えられる状況があるのに行動を怠っている、あるいは変えられる部分を考えるのを怠っている人がいるサインだと思ったほうがいい(P276)。
現代ビジネスマンに一番求められる能力:はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
はじめてのGTD ストレスフリーの整理術作者: デビッド・アレン出版社/メーカー: 二見書房発売日: 2008/12/24メディア: 単行本(ソフトカバー) このエントリを見ているあなたが、熟練の職人さんのように自分のペースで仕事が出来る職種や、工場勤務のようにルーティンの仕事が多い人なら、本書は全く関係がない。 反対に、自分の職務分担こそ決まっているものの、毎日のように新たなオーダーがふってきたり、複数のプロジェクトを掛け持ちしなければならない職種なら……。本書は必ず役に立つだろう。