『レシートを捨てるバカ、ポイントを貯めるアホ』

『レシートを捨てるバカ、ポイントを貯めるアホ』
坂口孝則
朝日新聞出版

読後の感想
いわゆる、「経済を身近な例で分かりやすく書きました、で興味をひくようなキャッチーなタイトルをつけました」的な本かと思いきや(ごめんなさい)意外に芯がしっかりした本でした。
その中でも、非常に興味をそそられた内容は「自己実現としての貧乏」という部分でした。

実は日本はそれほど大きな格差を抱えているわけではないのですが、大半の人は努力をしない言い訳として、もしくは現状への自己弁護として貧乏を演じているというものでした。ところが、無意識のうちにその考えが刷り込まれ、本当にお金がないことが習慣となり貧乏になってしまう。しかもその一連の流れが本当の習慣となりいつのまにか実現になってしまう、という流れでした。

この習慣を変えることがお金を貯める近道である、と何度も強調されているために、いわゆる自分で作った幻影や呪縛から解き放たれないといけない、という流れは実は本書で著者が一番伝えたいことではないかと感じました。

バイヤー時代の体験なども交えつつ、サクッと読めるけど意外と心にここる良書でした。

印象的なくだり
簡易的なものは、「一人1分100円がかかっている」というものだ。個人に支払われる給料だけではなく、福利厚生や退職金積み上げや社会保険などをすべて含んだ「分あたりコスト」と考えてもらいたい。会社や役職、業界によってバラつくものの、これをひとつの目安とするといい。
たとえば、あなたが参加していた会議に他10人の社員がおり、しかも8人ほどは何の発言もないまま2時間が経過したとする。その場合は、8人×120分×100円=9万6000円がムダになったことになる。大きな会議になると、すぐにその数倍にもなる。見えないコストはこれほどまでに生じている。
ちなみに、私は会議に出るたびに、ついついこの計算を頭ではじめてしまう。すると、あまりのムダに卒倒しそうになることがある。日本の企業は効率性を売りにしていると言われるが、私はとても信じられずにいる(P035)。

以前、コンビニの店長と話をしたとき、「もっとも万引きをする人は誰だと思うか」訊かれた。私は低年齢層のお客かと思ったけれど、答えは「アルバイトの店員」とのことだった。企業において真面目に働いている社員が大半だと知りつつ申し上げるけれど、身近な自社員がコストを垂れ流す原因になりうることは心に留めておいて良いと思う(P057)。

かつて、一代で巨万の富を築いた実業家の話を聞いて驚いたことがある、その人は、お金持ちになる方法は一つしかないと言った。「収入をあげ、支出を抑えることです」。そして、財産を増やすもっとも簡単な習慣があるという。「毎日、財産状況を眺めることです」と。
曰く、大金持ちになる近道は、エクセルで自分の財産を管理することだそうだ。銀行口座の残高(1円単位まで)、株価や債権等の金融資産の現在価値(もちろん、1円単位まで)、さらには自家用車についても日々減価償却を実施し(しつこいが、1円単位まで)、正確な時価資産総額を眺めるのだという(P070)。

現在注目されているのは、インターネットを利用した葬儀発注だ。日本人の8割は現在、病院で死を迎える。通常であれば、そこから病院馴染みの葬儀業者を紹介してもらう。ただ、葬儀費用は平均で240万円もかかってしまう。紹介してもらった業者を断り、インターネット経由で葬儀を発注する人が増えている。
サイト「価格.COM」では、葬儀をコーナーが設けられており、価格も明確だ。業者間の相見積りを入手したい場合は一括申請もできる。現在は直葬といって、式をせずに火葬してしまうケースも多く見られるが、それにも対応している(P116)。
参考リンク

人間は努力を重ねること苦手であることも説明した。努力ではなく、習慣化することが得策であることも述べておいた。
人間の脳は、これまでの成功パターンを繰り返す。まずは無意識のうちに節約を志向し、それを知識によって実現することができれば、あなたの脳はそれを成功例としてインプットする。そこまでくれば、あとは何も意識せずとも、「自動支出抑制ソフト」を自分自身にインストールしていることと同じだ。お金が貯まる人は、毎日を意識的に支出抑制に努めているのではない。自動的に、無意識に、それをやっているのである(P144)。

「自己表現としての貧乏」
ほんとうは、「富む者」と「貧しき者」という単純な二項対立は存在しない。しかし、大半の人は「この世の中には、私の知らないところで、たいへん儲けて楽な暮らしをしている人がいる」と、自分を社会の被害者に仕立て上げるために、自らを不遇な存在と定義づけることになる。「ああ、もう生活が大変ですねえ。将来はどうなることやら。夢なんて見られないわ」と、あまりに紋切り型的発言で、自分が格差社会の下流であることを宣言することにより、社会へ反抗をしている
(P151)

私は、〈将来の偶然と「出会う」努力〉をしたほうがいいと述べた。必要以上に貯蓄するくらいなら、貯蓄目標以上は「効果のわからないもの」に使ってしまったほうがいい。その「効果のわからないもの」がきっといつかより大きなリターンを返してくれる。少なくとも私は、「効果のわからないもの」への出費は止める気になれない(P201)。

具体的な行動へ
まずはマネールックの使い方を再度見直してみました。
今までは適当なタイミング(気が向いたとき)でしたが、一週間に一回に決め、プリントアウトをすることにしました。