『遠足型消費の時代』

読後の感想
いきなり質問です。

「お父さんのためのチェックリスト」です。
あなたは次のキーワード10個のうち、いくつ知っていますか?

1.日本経済新聞を読んでいるおじさんより街で見つけやすい、
DEAN&DELUCA」のトートバッグ

2.蒸し器「ルクエ」が起こした空前の蒸し料理ブーム

3.小瓶で400円もする!と当初見向きもされなかった
「辛そうで辛くない少し辛いラー油」

4.年会費が4200円もするのに、会員数が右肩上がりの
倉庫型スーパー「Costoco」

5.洗いあがってもザ・アメリカンな匂いがガンガン香る
柔軟剤「Downy」

6.日常の中でのちょっとした幸せ消費を特集する雑誌「Mart」

7.6000個が販売目標のはずが、17万個も売れた
「スーホルム」のトートバッグ

8.ガタガタする本棚が飛ぶように売れる
北欧インテリアショップ「IKEA」

9.女性通販サイト「リーマルシェ」で売れている、
“雑貨”問屋「松野屋」のヒット商品「針葉樹洗濯板」

10.グッドデザイン賞を受賞した
蚊帳生地の台ふきん「花ふきん」

5つ以下かしか知らない人を、家族のあるなし、性別を問わず、本書では「お父さん」と呼びます。

というわけで、僕はこの本でいうところの「お父さん」でした(5つなのでギリギリ…

デフレ不況下でも売れているIKEAやコストコ、ルクエ、H&Mなどを引っ張ってきて
その共通項は「キラキラ(ちょっとした非日常)」だと、というのが論旨。

論旨としては、ふむふむと読んでいましたが、何だか一貫してないなと思ったのは
共著だからでしょうか。
個人的には総論同意の各論不同意な本でした。

ちなみに当たり前ですが個々のブランドは圧倒的に細君が詳しかったです。
この本でも指摘していますが、これから消費を引っ張るのは「女こども」とのこと。
その部分は同意なんですけどね…

印象的なくだり
この商品の背景にはこんなストーリーがある。この商品を持つと私は素敵に見えるはず。この商品が買える私はお金持ち。この商品を使う私は、とってもロハスでスローライフ。
このように、商品を買うことよって、人は他人との「差違」を可視化させるのです。そしてこの「差違」こそが、先ほどから筆者たちが「キラキラ」と呼んでいるものの、正体の一つ、でもあります(P098)。

もはや人々は「世間」のような匿名性の高い集団ではなく、内輪の気心の知れた人とのコミュニケーションしか望まなくなっているといえます。つまり、コミュニケーションの分断化が起きていて、「世間」といったものが見渡しにくくなったのです。
社会学者はこの状況を「島宇宙化」や「部族の時代」と呼んでいます。もはや共通の価値観なんてない時代に、人々はそれぞれの「島宇宙」で生きているというのです(P119)。

「共感マーケティング」というと、ついついすべての人の「共感」を尊重するようなイメージを思い浮かべてしまいますが、それは違います。むしろ一部の「感度の良い人」が見つけてきた新しい情報に、その他大勢のフォロワーが後追いで「共感」しているだけなのです(P164)。

1996年の日本上陸時より「キラキラ」濃度は薄まりましたが、日本でもスターバックスはまだ「キラキラ」した場所です。アメリカンサイズのソファをこれ見よがしに配置したり、手作り感が残る家具や壁のデザインで雰囲気を出したり、そのわりには強烈な世界観を押し出す訳でもないので誰でも入りやすいのが人気の秘密とされます。要するに「非日常感」がちょうどいいのです。
一方で、かつでのマクドナルドは「効率化」の権化のような存在でした。とにかく素早く商品を用意して、お客さんには素早く食べて帰ってもらう。そのために椅子を堅くしたり、店舗BGMを調整するなどの手法が一時期話題になりました。
しかし、この「効率化」には限界が訪れます。効率性だけを追求したマクドナルドにとっての理想的なお客さんとは、「マクドナルドに来ないお客さん」になってしまうからです(P173)。