『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
齊藤正明

読後の感想
どうなんでしょ、このタイトル。
完全にツッコミ待ちなところが気になりますが、まぁそれほど期待せず放置していました(いわゆる積読)。
というわけで感想は「はずれ」でした。
そもそも著者がマグロ船に乗った経緯も理由も詳しく語られないまま物語は進むところにかなりの無理がありました(職務上の秘密なのかもしれないけど
まぁ冷静に考えて、大学卒業後一年位の社会人としても新人が経験したこと程度なので・・・。
ここで書かれている経験は、別にマグロ船ではなくても余裕で経験できます。
というか、こんなことも考えてないなんてよっぽど普段なんにも考えていなかったのね、とガッカリ感満載でした。

一つだけ、いい話だなぁと感じたことは、結果だけに目を向けすぎていると過程を楽しめないというお話。
結果として著者がマグロ船に乗った目的は果たせたのかどうかは記述がなかったので不明ですが、漁師さんが「キャバクラでウケるんだ」というように、人が聞いたら面白がるエピソードとしては、このマグロ船の話は最高なのではないでしょうか。

老婆心ながら、タイトルでハードルを上げすぎなのが、却ってマイナスである気がします(編集者が悪いの?)。

お風呂で20分で読みました。

印象的なくだり

私は船員手帳を取得するために、国土交通相の九州運輸局に行きました。
船員手帳とは、船員専用の身分証明書で、これがあれば外国の海域でも入れるパスポートになるのです(P.020)。

親方は船のオーナーであり、どこの海域にマグロがいるのをかを予測します。
(中略)
一方、船長は船を予定どおりの場所へ動かすのが役割です(P.021)。

親方・・・
「一体、何やっとんじゃ!せっかくうまくさばけるようになったお前がここでケガしよったら、みんなが困りよろうが!こんバカ!」
(中略)
人を叱るとき、「何やってんだ!」、「やる気はあるのか?」などと叱責しがちです。しかし、こうした言葉を使ってしまうと、叱られたほうも「そんな言い方しなくてもいいのに・・・」と、反発してしまいます。
逆に、親方のように「あなたのように優秀で、ずっと働いていてほしい人が、ここでミスをしていまうのは痛手だ」という相手の能力や存在を尊重するような表現が入っていると、叱られることに愛情を感じるのでしょう(P.171)。

このようにベテランは若手を褒めますが、私がおもしろいと思ったのは「上から目線で褒めないこと」です。
たとえば、「お前も、マグロの処理がだいぶ上達したな」というような言い方をするのではなく、「おまえの処理作業が上達しちょるおかげで、今まで以上にマグロが高く売れるようになるの」と、「あなたのおかげで助かっている」といった表現を使っているのです。
ベテランがこのような表現を使うことで、若手は船の中に自分の居場所があるように感じられるのです。「20mしかない、逃げ場のない空間」に思えるマグロ船も、漁師たちにとってみれば、「自分にとって最高の居場所」となるのでしょう(P.179)。


人気ブログランキングへ
押して頂けるとやる気がでます。