『シュガー社員が会社を溶かす 』

シュガー社員が会社を溶かす
田北百樹子

読後の感想
数々の会社に社会保険労務士として関わった筆者が「自分に甘く自立心に乏しい社会人」のことを「シュガー社員」と称して、彼らをパターン別に分け、その分析と対応を書いた本です。
まぁ分析の区別の仕方はさることながら、パターン別に分けて(もちろん仮名ですが)具体例として挙げて説明し、最後にきちんと対処法を書くスタイルは、書きっぱなしが多いこの手の(新入社員を批判する)本の類にしては非常に真摯で好印象でした。
何で好印象を抱いたのかな?と考えてみましたが、筆者が社会保険労務士という専門職として企業から問題解決を求められる立場というのが大きく関係しているのであろうと感じました。
つまり、最終的には何らかの形で解決させないといけないという立場の人が書いた本なので、最終的に何らかの形で解決している、という点が自分の好印象の理由だったわけでした。

せっかくいい本だったのですが、「ゲーム脳」などに安易に触れたりと専門外にも手を出しがちな脇の甘い記述も多く見られたのが残念なところ。
「シュガー社員」というネーミングは見事なのですが、それ以外はとほほなネーミングでした。

印象的なくだり

1.クレームを訴える親とは一人で面談しない
2.最初から時間を区切って面談する
3.相手の要求が酷い場合には会話を録音する(P.077)。

適正検査は、わざわざお金を出して外部に依頼しなくても自社でも可能です。まずはこれから募集する職種と、会社で必要としているスキルを挙げてみましょう。「必要なのは、やる気」などという、手垢にまみれキャッチコピーのようなモットーは今すぐ禁句にしましょう。求人雑誌にも「必要なスキル」が掲載されていますが、それよりも、もっと細かいスキルを挙げてみてください(P.154)。

これは激しく同意です。
求人を安易に考えた結果、後々とんでもないことが発生するのです(体験済み)。
どこにでもある求人を見るたびに、何も考えていないんだなぁと思ってしまいますね。
求人が真剣なら、求職者もそれに応じた真剣な人が来るというものです(全員とは言わないが)。

労働基準監督署の「解雇予告除外認定書」でした。無断欠勤による懲戒解雇の場合は解雇予告手当が必要ないのです(P.208)。

会社では経営者である自分の決定したことが何でも通るので、労務に関することも法律よりも自分が決めたことが優先すると思ってしまいがちです。この考えを改めないかぎり、どこかで高い授業料を払うことになります。
(中略)
法定労働時間(一日八時間、一週四〇時間)を超えた場合は、割増の時間外手当を支払うことになっています(労働基準法第37条)。この法律があるかぎり「向こうはそれで納得している」と主張しても通らないのです(P.218)。