『田村はまだか』

『田村はまだか』
朝倉かすみ

読後の感想
札幌、ススキノのバー「チャオ!」で、四十になる同級生男女五人がクラス会の帰りの三次会をしながら、彼ら同級生の田村がくるのを待つお話。
全六話構成になっていて、最初は名前すら分からなかった登場人物が後の章の主人公的な役割になっており、田村を挟んで物語を紡いでいくというものでした。
マスターが非常に良き狂言回しになっており、最初は単なる脇役かとおもいきや、意外なところで接点を持たせてくる辺りが、著者の構成の上手さを強く感じさせました。

で、ちょっと悪意ある感想としては、この同級生五人たちと田村って、そんなに仲良くなかったんじゃないかなぁと思ってしまったこと。
田村の奥さんの中村理恵と同級生のうちの一人は親交もあるような記述は見られたけど、どちらかというと田村は孤高の人、つまり誰とも馴れ合わない人だったはずです。
そんな人を同級生が待つ、ってなんか変な感じがずっとしていました。
僕はまだ彼らの齢にたどり着いていないけど、もう少しするとそんな気持ちにもなれたりするのかなぁとちょっと感傷半分、傍観半分でした。
あと、最後の貸し切りには二瓶さん呼ばないほうが良かったんじゃないかなぁと思います。
彼は「過去形」で語られるべき人だったはず(印象が固定されるので)じゃないかなぁと。

ところで、田村のお父さんって、あの人だよねぇ(ややネタバレ)。

印象的なくだり

「全速力で走れよ、きみ」(P.075)