『1日30分達人と読むビジネス名著』

『1日30分達人と読むビジネス名著』
日本経済新聞社編集

読後の感想
いいものだとは分かっていてもなかなか読み始められないビジネス名著。
いわゆる敷居が高い、というやつです。
本書はそんな敷居の高さを低くする(使い方あってるのかな)効果があるかと思います。
つまり、本書はビジネス名著に取り掛かろう、というするのに役立つからです。

本書の構成は、一冊に一人の解説者がついて、本の内容を噛み砕いて説明してくれるというもの。

但し、注意点としては名著の内容を開設という形ですが
孫引きしているため内容については注意が必要だということです。
つまり、分かりやすくなっている代償として正確性(というか文脈)が犠牲になっているのです。
この点を踏まえて、あくまでもエッセンスを楽しむものとしては良いのではないかと思います。

ちなみに本書の中で一番良かったフレーズはコレ。

うまくいっている組織には、必ず1人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくない者がいる。
この種の者は、気難しいくせにしばしば人を育てる。
好かれている者よりも尊敬を集める。
一流の仕事を要求し、自らにも要求する。
基準を高く定め、それを守ることを期待する。
何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない(P.033)。

「誰が」という部分をいつも気にしてしまう…。

食べてみたいもの

ドゥルセ・デ・レチェ(牛乳と砂糖でつくられるブラジルの伝統的な糖菓でキャラメルシロップに似ている)(P.070)。

印象的なくだり

そもそも、あなたの会社の事業とは
事業を定義するには、まず顧客からスタートすべきとドラッカーは説きます。
①顧客は誰か、②どこにいるのか、③何を買うのか、④彼らにとっての価値は何か、を考察しなければなりません。
しかし「我々の事業は何か」という問いの答えは、論理的に導かれるものではなく、勇気を必要とする意思決定です。
それゆえにドラッカーは、これこそトップマネジメントの最も重要な責任と役割であると位置付けたのです(P.021)。

どの組織にも存在する意義・目的であるミッション(使命)が存在し、その目標を明確に示した「ミッション・ステートメント」が必要です。
企業にとって「お金を稼ぐ」ことは目的の1つではありますが、それが一番の目的であることは滅多にありません。
ミッション・ステートメントは、すべての従業員に共感・共鳴をもたらすようなパワフルな目標であり、企業として現在の取り組みや行動が適切であるかを判断する基盤となるものでなくてはなりません(P.048)。

困難でも攻めろ
『スターバックス再生物語』でシュルツが示している2つめの教訓は、成長を目指す企業は困難な状況に陥っても決して守りに入らず、常に攻めの姿勢を崩さず、「創造的破壊」を受け入れるべきだ、ということです。
シュルツは多くの大企業が犯しがちな大きな過ちとして、企業が一定の成功を収めると、追随企業としての「攻め」の姿勢から一転、極端に保守的になり、「守り」に入ってしまうことを指摘しています(P.053)。

シュルツは会社を再建するためには、人材への投資が重要だと確信していました。
グローバル化した環境では、競合者は簡単に相手の成功パターンをコピーできますが、社員同士の接し方や働き方といった企業固有の文化は短期間でコピーすることはできないからです(P.063)。

「芸術とは、見た人が『そうそうこれが言いたかったんだ』と思うことだ」と言ったのはトルストイですが、20世紀最高の経営者(manager of the century)に選ばれた米ゼネラル・エレクトリック(GE)の前最高経営責任者(CEO)ジャック・ウェルチが書いた『ウィニング』は、読者に「そうそうこれが言いたかったんだ」と何度も思わせるげ術的な作品です。
てらいのない文章で、後で考えてみれば当たり前のことを、ずばり、ずまりと指摘するこの本は、ここ30年で3本の指に入る経営書と言ってよいと思います。
「読書の目的は知識ではなく刺激を受けることだ」とすれば、経営者だけでなくこれから社会に出る人も、読むたびに自分の思い込みを見直したり、考えを深めたりする刺激を味わえるのではないでしょうか(P.076)。

コミュニケーションとは、情報を発信することではありません。
発信した「情報」となぜ情報を発信したかという「意図」が受け手と共有できることです。
つまり、コミュニケーションの成否は、受け手側(会社で言えば多くの場合、部下)がどう受け取るのかにかかっているのです。
それにもかかわらず、言ったのだから、メールを送ったのだから、「わかっているはずだ」と思っていることがないでしょうか(P.078)。

問題が見かけよりひどかったり、隠し事が公になったり、あるいはひどい報道をされると、びっくりしてうろたえたり、しまいには怒ってしまう経営者を時々見ます。
サッカーの試合で、手が使えないと怒っているのと同じで、とても恥ずかしいことです(P.085)。

クリステンセンが、イノベーションについての理論を詳しく解明するうえでカギとなったことを再度整理すると、以下の、3つの仮設だと考えられます。
①イノベーションは(既存製品の改良など)持続的なタイプと(それまでのリーダー企業にとって脅威となる)破壊的なタイプに分類できる。
②破壊的なタイプは持続的なタイプが生み出した市場のほとんどをやがて代替する。
③既存企業は株主と顧客の要求に合理的に対応しようとするがゆえに、破壊的なタイプにうまく対応できない。
ここで注目すべきなのは、クリステンセンがその時の中心顧客のニーズに沿っているかどうかでイノベーションを分類したことです。
これまでのイノベーションの多くの分類方法が技術の革新度合いを判断基準としていたのに対し、顧客の視点から見た点でこの分類は独創的なものでした。
持続的イノベーションは、中心顧客が要求してきた性能を継続的に高めていくものです。
これに対して、破壊的イノベーションは、短期的には「製品の性能を引き下げる」側面を持っています。
それでも一部の新しい顧客に評価されるうちに、やがて中心顧客にも画期的な低価格や使い勝手のよさをもたらします。
この新しい分類に基づいて、クリステンセンは、既存企業は破壊的イノベーションにうまく対応できないと予測します。
その予測に基づいて、企業は「既存組織とは別の組織で破壊的イノベーションを取り組む」しかないという処方箋を示すことになります(P.164)。

ドラッカーは若いビジネスパーソンを励ますように、こう言っています。
「(成長とは)うぬぼれやプライドではない。誇りと自信である。
一度身につけてしまえば失うことはない何かである。
目指すべきは、外なる成長であり、内なる成長である」(P.234)。