『僕はパパを殺すことに決めた』読了感想

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https://fukudashigetaka.com/article/73176052.html

mixiのレビューの転載なので一部かぶっているとこもありますが。

 奈良県の自宅放火事件を題材にしたルポです。供述調書の引用がなされており、鑑定をした医師が、秘密漏洩罪で逮捕されています。こういった事情もあり、かなり手に入りにくい本になっています。

 全体を通しての一番大きな印象は、その引用の多さです。最後のほうは割と著書自ら書かれていますが、前半はほとんど引用です。

 供述調書は本来外に出ないもので、プライバシーの権利によって守られているはずのものです。
 それを「だが、この事件の大きな原因は、父親にある。その事実から目を背けてはならないと私は思った。だから本書に、父親の供述調書の全容を記すことに決めた。」(P059)と、わずか二行で記し、正当な手段を経ないで手に入れた情報源を基にし、それを出版してしまうところに、この著者のプライバシー感覚が如実にあわられていると感じました。
 著者の考えはある一つの考え方であって、明らかにジャーナリストとしての正常なバランス感覚を逸脱していると思います。

 この考えは文章のところどころから感じられ「少年が逃げている間に何をしていたかについては、私が週刊誌や月刊誌にレポートを寄せた以外は、これまでいっさい報じられていない。私は供述調書により、その全貌を掴んでいる」(P182)などからも読み取れます。

 肝心な原因については、鑑定書の考えをそのまま踏襲しただけの考察です。独自の観点などは読み取れませんでした。自分は、本来こういった類の本は、著者が地道に情報を集め、分析し、考えたことを書き著すことが、重要だと考えていますので、これでは著者は何のために出版したのか全然分かりませんでした。

 あくまでも暴露本としての評価にとどまる本だと感じました。