『店舗出店戦略と売上予測のすすめ方』

『店舗出店戦略と売上予測のすすめ方』
ディー•アイ•コンサルタンツ編

読後の感想
店舗開発のコンサルが書いた本ということで、やや期待していましたが、
全体的にざっくりまとめすぎたため、何が書きたいかが分かりにくかった印象です。
要は「店舗開発を軽く見るなよ、コンサル頼めよ」ということなのでしょうか?(違う?
とにもかくにも、P51の図解が間違ってるのは致命的でしょう。
資料も正確に作れないコンサルに用はない(以下特に秘す
可もなく不可もなし、やむなし。

印象的なくだり

企業•店舗経営はギャンブルではない。
そこに働く従業員•取引先、ひいてはお客様の夢を
実現させるものでなければならない。
したがって、企業の店舗展開は成功に向けて慎重に舵を取っていく必要がある。
そのためにも精度の高い売上予測は企業にとっても
個人にとっても最重要な戦略のひとつであり、必要不可欠なものである(P.010)。

「お客様の」という視点が入っているのは忘れがちですね。

走っている車からみると、アウトカーブ側や店舗があるのと、
インカーブ側に店舗があるのとでは大きな違いがある。
カーブの角度にもよるがインカーブ側の店舗は認知することが困難である。
なぜならば、ドライバーの視線は、車を安全に運転する上で図の点線方向に向くからである。
ご存知の通り速度を増せば増すほど視界が狭くなるので、
なおさらインカーブ側の店舗は不利になる。
できることならばインカーブ側のお店は避けたい。
対処方法としては、反対車線へ看板を設置することなどが考えられる(P.036)。

これはなるほど、と膝を打ちました。
単なるカーブと一絡げにするのではなく、きちんと区別、と。

[入口・駐車場]
入り口はできるだけわかりやすく、入りやすくすることがポイントで
「IN看板」「矢印ライン」と連係プレーが必要である。
駐車場についてのポイントは2つあり、
1つめは夜の駐車場は明るくすること。
2つめは免許取りたての女性ドライバーでも
「簡単に入ってこられる」「無理なく駐車できる」「簡単に出て行ける」
3要素をそろえることで、お客様の安心感を助成、昼夜を問わず来店を促進できる。
余談になるが、世の中の大半の消費は女性が引っ張っていることをお忘れなく。
それはサラリーマン家庭を例にとると分かりやすい。
ほとんどの場合、男性は小遣いをもらい、その中で消費しているが、
女性(特に主婦)は家庭すべての消費に関わっているからである
(P.080)。

郊外型のマーケット規模を表す最もわかりやすい指標として「交通量」がある。
(中略)
加えていうならば、「乗用車比率:平日60%」以上の物件が望ましい。
※交通量データは「国土交通省:道路交通センサス」で得ることができる

※近年地図データベースソフト[GIS]により、交通量や旅行速度が簡単に手に入る。
例)
国際航業:アースファインダー
TG情報ネットワーク:アイネットマップ
技研商事:マーケットアナライザー など(P.091)。

実査の五大原則
出店「可否」の判断のためには、なによりも現場の実査が
必要不可欠であることは、皆が承知していることである(百聞は一見にしかず)。
では、どのように物件を見ることが大切なのか。
実査の基本・観点はなんだろうか。
ずばり、正確な売上予測のための実査の原則は下図の通りである。
内容にいては難しい表現をしているだけで、
皆さんが日常行っていることと、さして変わりはない。
ただし、仕事の基本と同じで、このことを明確に表現し、
それを継続しているかどうかが大きな違いである。
この違いを15年積み重ねると、大きな差として現れてくる。
実査の五大原則
・予測習慣の原則
・比較検討の原則
・五感優先の原則
・数値化の原則
・仮説・検証の原則(P.129)。

本当に小さなことも継続して続けていくと大きな違いになるのは
仕事をする上で何度も実感しました。
習慣にして、楽して継続しよう。

経営者から開発責任者、開発担当者はそれぞれの戦略立案から店舗開発実務まで
役割分担して進めていくことになる。
ただそこに共通した出店戦略の考え方の共有があってこそ、力が分散せず効率のい開発ができる。
共有すべき考え方は「既存店の分析と地域の市場規模を元に有望地域を探る」ということである。
これを経営者から開発部員に至るまで十分に認知しているかどうかで
結果は大きく違ったものとなるだろう。

既存店の売上、利益状況と自社にとっての市場規模を分析することで
経営層、開発責任者は、都道府県ごとの出店の方針を明確に立てることができる。

さらに県ごとに市町村の出店計画も具体的にすることができる。
つまり、どのような優先順位でどの地域へ出店していくかという
出店戦略を組むことが可能になる。
その出店戦略に沿って、地域の担当者は、大字・町丁目レベルの分析を行い、
出店候補地域(有望な大字・町丁目)を選出し、その地域の中の
出店ポイントを落とし込むことで非常に成功率の高い出店計画ができることになる。
地域担当者は、商圏の市場規模をベースに競合の配置、物件の立地、経済条件から
ピンポイントで出店計画を組むことになる(P.300)。

まずは既存店の分析から。

参考サイト
国土交通省:道路交通センサス

『なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学』

『なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学』
早川書房
パコ アンダーヒル, 鈴木 主税

読後の感想
読む前は、よくない品物をマーケティングの力で売ってしまう、みたいな印象でしたがまったく違っていました。
店側の視点よりもむしろ、毎日買い物をするのに、どのように買い物をしているのか考えたことがなかったので、客の視点での新発見が多かったです。
特に、膨大な買い物客のデータを基に、フロアの構造、商品の置き場所からポップまでを考える。あくまで「売り物」のせいにする単純な考えでないところが、非常に好感が持てました。最後の(P.338)部分は、時間がきちんと考慮されているところがとどきっとしますね。
この本のタイトルにある「科学」たるゆえんは、事象を観察し法則の発見にある点だと感じました。あくまでマーケティングは発明ではなく、発見であり、新しいものを作るのではなく、いまの問題点を解決するだけという姿勢が非常に印象的です。ある意味、人間の行動学としての内容で、予想外のおもしろさでした。
中でも、10章の老人をテーマにした章は、先見の明に驚きました。思い当たる節ばかりで、きっと的中するような気がします。

印象的なくだり
ショッピングの科学の背景にある第一の原則は、単純そのものだ。すべての人間には共通した生理的、解剖学的な能力と傾向と限界と欲求とがあり、ショッピング環境はこうした特徴に合わせなければならないのである。
言い換えれば、商店や銀行やレストランなどの空間は、ヒトという動物の特性になじむようにする必要がある。客には性別、年齢、収入、趣味や好みなど、外見的な相違がいくつもある。だが、それよりも共通点のほうがずっと多いのだ。この事実と、それにともなう考えー店は使用者の生物的な特質を反映すべきだーは、わざわざ言うまでもなく、わかりきったことではないだろうか?つまるところ、こうした店を設計、計画、経営するのは人間で、そのほとんどは、ときとして自分自身が買い物客ではないのか。すべては正しく行われて当然だと思える(P052)。

そこで教訓。新作が欲しい客に、他のもので気をそそろうとしてもうまくいかない。さらに大事な教訓。どれほどマーチャンダイジングに工夫をこらしたところで、買い物客に本来の目的の遂行を思いとどまらせることはできない。いちばんいいのは、それにつきあうことだ(P108)。

相乗り販売を狙え
書店なら、主な対象読者の性別で各売り場を配置するといい。つまり、コンピュータとスポーツとビジネスで一つ、セルフヘルスとダイエットおよび栄養と健康と家庭で一つというぐあいである(どちらが男性か女性かは読者の想像におまかせする)(P282)。

(前略)理論上は、もっとも品質のいいブランドならそれこそサルでも売ることができるのだ(P284)。

商業の世界のプリンスといわれるジョン・ワナメーカーがかつて言ったことだが、(私が簡単に言いかえると)、彼の広告活動の半分は無駄だった。だが、どれがその半分かは自分でもわからないという。現代の販促マテリアルやマーチャンダイジングの戦略に関しても、それと同じことが言えるのである(P289)。

平積みは本の見せ方としてはすばらしいが、買わせるという観点からすれば完璧とは言い難い。平棚に商品を補充する係の店員は、できるだけきっちりと仕事をしようとする。まさに命がけできれいに並べようとする。その結果、客は本を手に取るのさえ気がひけることになる。誰かが一所懸命にやった仕事を台なしにしてしまうような気になるのだ。われわれは書店の調査で何度もビデオ撮影をしたが、本の山に近づく客に、ためらいの気持ちがありありと見てとれた(P321)。

競争相手は同業者だけだと信じている商店主は、危険なほど視野が狭いと言わざるをえない。実際、小売店の競争相手になるのは、消費者が時間と金を費やすもののすべてなのだ(P338)。