『アイデアの99%―「1%のひらめき」を形にする3つの力』-1

『アイデアの99パーセント』
スコット・ベルスキ

読後の感想
タイトルの意味は何かな?と思いながら読み始めました。そしたら、一行目にいきなり核心を付く言葉が…

この本は、斬新なアイデアを絵に描いたもちに終わらせず、現実のものにするための本です。

クリエイティブな人たちは直感的に行動するというのが、世間一般の見方でしょう。即興でなにかを作ったり、勘で動いたりすることが、ある意味でクリエイティブな才能を持つことの証でもあります。ですが、クリエイターや起業家、そしてビジネスパーソンの中でずばぬけて生産性が高く、成功している人々をよく分析してみると、実行力に秀でていることがわかります。
つまり、アイデアを思いつくこと」は、プロセスのほんの一部にすぎません。おそらく全体の1%程度ではないでしょうか(P001)。

と出てきました。形にすることの大半は「実行できるか」にかかっていて、「思いつくこと」はできても、実行することが難しいので、結果みんな形にできない、というものです。
実際に自分も手帳に「ああなったらいいなぁ」とモヤモヤと思っていることはたくさんあるのですが、形にならないままのものがほとんどです(まぁ、別に思いついただけで、必要はないな、と捨てたものが大部分ですが…)。

この本が、アイデアを形にするために必要な「アイデア実現力」には三つの要素があると書いています。それは

アイデア実現力=(アイデア)+整理力+仲間力+統率力(P019)。

です。そのうち整理力と統率力は一般的な考えであり、そもそも自分の考えと似通っていたので非常にすっきりと理解できたのですが、仲間力の考え方は斬新でした。

どんな性格の人であれ、仲間やグループの力を借りるこ とは絶対に必要です。コミュニティはだれもがつまづく問題へのヒントを与えてくれ、幅広い知見にもとづいて、大きなインパクトをもたらすひらめきを与えてくれます。仲間を引き入れることの最大の利点は、他者への責任を負うことであり、これが常にアイデアを実行に移し続けるための拘束力になります。他者に対して責任を負うようになれば、クリエイティブな衝動が目に見えるプロジェクトになるのです。アイデアは根になります。コミュニティは創作意欲を育み、根に栄養を送るのです(P023)。

このように人は他人に対して責任を負う、という人間の本能的な部分を
利用した自己の制御方法は、誰も傷つかないいいやり方だと感じました。

つまるところ、どんな手法もやり続けることで、一番効 果が上がるのです。人それぞれにシステムは違いますが、生産性の高い人々は、自分の習慣の細かい部分に注意を払うことで、やる気を持続させています。アク ション・ステップを管理するシステムを作るときには、「持続できるもの」にしなければなりません。
アクション・ステップはアイデアを前進させるために実 行すべき具体的な事柄です。アクション・ステップがはっきりとして具体的であればあるほど、実行に移す際のハードルが低くなります。アクション・ステップ があいまいだったり複雑だったりすると、それを飛ばして、よりわかりやすいものに取り組んでしまいます。そうならないために、すべてのアクション・ステップを動詞で表すのです。
プログラマーに電話して、○○を話し合う
○○のためにソフトウェアをインストールする
○○の可能性を調査する
○○のサンプルを集める
○○のために資料を更新する
○○の問題に対応する
動詞で表せば、アクション・ステップを一目見ただけで、すぐにどんな行動が必要かわかります。また、同じ理由で、アクション・ステップは短い文書にしなければなりません(P052)。

デジタルな生活に慣れてくると、なんらかの規律をもたなければ受信箱を整理することがおぼつかなくなります。というのも、携帯デバイスと常時接続のおかげで、メッセージがあまりにも頻繁に流れてくるからです。電話、PCメール、携帯メール、対面-その他さまざまなオンラインの情報はもちろんのこと-といった延々と流れ込む情報によって、集中力は失われます。ですから、いわゆる「受け身の作業」の罠にはまらないように気をつけなければなりません(P073)。

次から次へとアイデアを生み出す人は、それだけ多くのプロジェクトに関わったり、自分ではじめたりしているはずです。プロジェクトの要素を書き出して整理し、実際の問題解決のためにあれこれと工夫し、アクション・ステップをやり遂げるには、膨大なエネルギーを必要とします。エネルギーは人間にとってもっとも貴重な資源です。持てるエネルギーには限りがあります。
(中略)
その貴重なエネルギーをどこに注ぎ込むかを決める場合、すべてのプロジェクトを「最高」から「休止中」までの範囲に添って一目でわかるように書き出してみましょう。現在進行中のプロジェクトにどのくらいのエネルギーを使うべきでしょう?
いつの時点でも、最大の注意を払うべきプロジェクトがいくつもあるでしょう。一方でそこまで重要でないプロジェクトや、今は休眠中のものもあるはずです。
(中略)
覚えておいてほしいのは、プロジェクトにかける時間の長さに従って分類するものではないということです。プロジェクトの重要性をもとに、それにどれだけのエネルギーを使うべきかによって、振り分けるのです(P080)。

自分の中でいま現在もっとも重要なプロジェクトはなにかを考えてみた。
実際に時間をかけているものとは異なった。ふむ。

次々と作業を続けていくうちに、プロジェクトが踊り場にさしかかり、自分を見失うことも少なくありません。アクション・ステップに圧倒され、終点が見えなくなったときが、その踊り場です。
(中略)
プロジェクトの踊り場から逃げ出すためのお手軽で魅力的な理由、それはもっとも危険なもの—新しいアイデアです。新たなアイデアは、エネルギーとやる気を取り戻してくれますが、それでは1つのことに集中できません。すると、どうなるでしょう?形にならないまま見捨てられたアイデアばかりが、踊り場にとどまることになるのです。新しいアイデアを常に生み出すことは創造性の本質の一部ですが、そこから離れられなくなると、自らの可能性を狭めてしまいます(P094)。

まるで、自分のことを言われているようです…
新しいことをやり始めるのは、前に進んでいるようで、実は本質から逃げているだけ。

上記の通り、決してクリエイティブな人だけに使える方法ではなく
むしろ大部分の非クリエイティブな人向けに書かれているのではないか
と思うくらいオススメの本でした。

ちなみに一番心に突き刺さった言葉は

「自分のキャリアは、100%自分の責任だ」(ロバート・キャプラン)

でした。
自己責任ではない。結果責任でもなく「キャリア」と線にすることによって責任の所在がより明確になるなぁ。

印象的なくだり

制約は実行を促す役割を果たします。制約が与えられないなら、自分からそれを求めるべきです。まず、希少な資源-時間、資金、エネルギー(人材)-からはじめるといいでしょう。また解決すべき問題をさらにかみくだくことによって、ある種の役に立つ制約を見つけることができるでしょう(P117)。

ものづくりの道のりで自信を持つためには、進歩が少し ずつ目に見えなければなりません。たとえば、列に並んで待つときがそうです。コンサート会場に入る人たちの長い列に並んでいると、ほんの数センチずつです が全員が前に進んでいくのがわかります。ですが、列は進んでいるのに自分のすぐ前の人だけが止まると、いらいらするでしょう。その人がすぐに列に追いつく とわかっていても、間が空くといらいらします。じっと立ったままで全身を感じられないといやなのです。生産的だと感じるには、列と一緒に動き続けていたい ものです。列と一緒に少しずつ動いていても(後で追いつくのに比べて)目的地に早く着くわけではありませんが、その方が気分がいいですし、時間がかかってもいいと思えます。
(中略)
前進を感じることは実行の重要な要素です。今あるアイデアを実行するよりも新しいアイデアを考えることに関心が向きがちなら、進歩の印を身の周りに置くことで、集中力が高まるかもしれません(P123)。

フリーのクリエイターでも、大きなチームの責任者で も、継続的にフィードバックを収集し、交換するための手法を開発できます。私は、ヒューレット・パッカードのリーダーシップ育成担当のバイス・プレジデン トであるステファン・ランダウアーから、小規模でも大きな成果をあげているチームのやり方を1つ教わりました。ステファンは、チームリーダーが各メンバーと主要クライアントに対して、参加者それぞれが「すべきこと」「やめるべきこと」「続けるべきこと」の3点をメールで尋ねるように勧めています(P161)。

自分の能力を率直に知らしめようとすると、自慢だと思われかねません。そのため、自分勝手だと思われたり、押しが強すぎると思われるのを恐れて、積極的に自分を売り込むことに躊躇するのです。
ですが、仲間の手助けやチャンスを手に入れられるかどうかは、周囲の人が自分の資質や積極性や関心を知ってくれるかどうかにかかっています。
(中略)
周囲の人があなたの長所を知らなければ、いつ、どこで、どのようにそれを活用したらいいか、わかるはずがありません(P190)。

クリエイティブなプロジェクトのリーダーは、まず自分にしかできないこと―他人には任せられないこと―に集中すべきです(P204)。

プロジェクトの最初から完全なコンセンサスを求めようとするべきではありません。コンセンサスにこだわると、結局だれも怒らせず、だれも喜ばせないものに落ち着く危険があるからです(P235)。

仕事に生かそう

よい部分を発見しそれを共有する能力は、建設的な批判 を与えるよりも難しいことです。人間は生まれつき批判的な生き物です。オーケストラの中では、ずれた音を聞きとる方が完璧な音程を聞きとるよりも簡単で す。オキャラハンが言うように「みんな、長所を教えるのは簡単だと思っています。ですが、『そのフレーズは新鮮で、まるで雪に覆われた山のような、ベット の上のシーツの美しいイメージが浮かびますね』と言えるまでには、何年もかかります。その技術には、みんななかなか気づかないものなのです」(P248)。

自分の仕事などまさにこれに当てはまる。
みんなが簡単だと思っていることをどうやったら簡単ではないと伝えることが出来るのだろうか、いつも考えてます。