ハゲタカ(上)(下)
講談社
真山 仁
読後の感想(上下共通)
読後感さわやかな、まるで少年ジャンプを読んだかのような感じ。
まず主人公が超強い。非の打ち所がない。
それでもって敵をばったばったと切り捨てる。全然負ける要素がない。
そんなわけで読み物としてはサクサク読めるのですが、なんか味気ない印象も受けてしまいました。
ただ文章はとても分かりやすく、自分が直接経験できなかった時代を単純化した形ではありますが、理解できたような気がしました。
印象的なくだり
アメリカ人の悪いクセは、世界で一番優秀なのはアメリカ人だと信じて疑わないことだ。その結果、多くのアメリカ人は日本でのビジネスに失敗する。
彼らの行動規範に「郷に入れば、郷に従え」という言葉はなかった。全てがアメリカ流であり、それが通じなければ、あらゆる手をつかってねじ伏せにかかる。
だが、それでは複雑怪奇な日本という島国では成功できない(P148)。
不良債権ビジネスの世界では「ベターオフ」が理想だと言われる。すなわち、バルクセールでバランスオフできる銀行の負の遺産は前よりは良くなり、債務者側も借りていた額の数分の一で借金が清算できる。もちろん、その間にいる不良債権処理業者も利ざやを得られる。プレイヤー全員が、それぞれに「よりベターになれる」ビジネス。そう考えれば、不良債権ビジネスもけっして悪ではないという発想ができる。
しかし、三○億円の融資の原資は預金者の預金であり、銀行の手落ちで二九億円も損を出して、「みんなハッピーで、ベターオフになるから良かった」という理屈は通用しない。彼らが真っ当な融資をし、それを不良債権にせずに返済してもらえたなら、預金者の利回りはもっと良くなったかも知れない。
しかし日本の場合、そうした銀行の杜撰な融資が、「バブル崩壊」という社会現象の影に隠されてしまった。さらに政官財が一体となって「この苦難を国民が一致団結して耐えよう」というキャンペーンを展開。結果的には、「この不景気だから銀行の金利が下がるのは仕方がない」という諦めを植え付けた。また様々な巨額の債権放棄も、「日本経済の屋台骨を守るためにはやむなし」というムードをつくり上げ、預金者は「自分の預金が減るわけじゃないのであれば致し方ない」と納得してしまう。
その結果、九○年代以降始まった金融危機の対策には、当初は「預金者保護」というお題目を唱えるのだが、結果的には政官財の鉄のトライアングルの中にいる者だけが「ベターオフ」になってしまう。この構図が、日本がなかなか金融危機から抜け出せない大きな要因にもなっていた(P180)。
「おっしゃる趣旨は分かります。ただ我々のビジネスに曖昧は禁物でして。大変恐縮ですが、具体的にどのような返済計画をお望みか、お聞かせ戴けますか?」
鷲津は、ビジネス用の物腰の柔らかい落ち着いた口調でそう返した(P185)。
ビジネスで失敗する最大の原因は、人だ。見方には、その人がこの闘いの主役だと思わせ、敵には、こんな相手と闘って自分は何て不幸なんだと思わせることだ。そして、牙や爪は絶対に見せない。そこまで細心の注意を払っても、時として人の気まぐれや変心、あるいはハプニングのせいで、不測の事態が起きるんだ。だから結果を焦るな。そして馴れ合うな、いいな(P453)。
マスコミ対策をもっとしっかりするように厳命しておきました。大切なのは真実ではなく、最初に伝えられる事実だからと(P013)。
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