台湾人と日本人―日本人に知ってほしいこと
総合法令出版
謝雅梅
読後の感想
台湾人が書いた「台湾人とは?」を知りたくて読み始めました。
先日旅行で台湾を訪れたのですが、行く前と行ってきた後ではかなり印象が変わり、「また行きたいな」と思える国でした。
かつて日本の制度や教育がなされていた名残とも思える部分も散見でき、読んでいて、郷愁を感じる部分もありました。
一番の肝は、やはりその複雑な国の成り立ちだと感じました。
「自分の国籍は何なのか」と悩むのはとても不幸で悲しいことですね。
もっと台湾のことを知りたいと思わせる本でした。
印象的なくだり
唯一日本を感じさせてくれたのは、日本人の先生たちと亜熱帯の台湾では絶対に味わえない秋と冬の風景でした(P029)。
日本人はどこへ行っても群れたがる習慣があるといわれていますが、実際には台湾人、中国人、韓国人の間にもこのような習慣が見られます。
同じ国同士なら考え方が近いし言葉にも支障がないのでどうしても集まってしまいます(P031)。
台湾の官僚、政治家は半分以上、外国の修士号や博士号を持っていることからも分かるように、台湾社会では学歴が高ければ高いほど有利です。
だから、台湾人はより高い学歴を求めて次から次へと海外へ飛び立っていきます(P039)。
思えば、会社に入って初めて迎えた正月、ある上司から年賀状が届きました。
何という礼儀を重んじる日本人だろうと思いながら、裏に書かれていた文字を見ると、「今年はもっと厳しくなっていくと思うので、覚悟してください」と書かれていました。
私は面喰らい、もう大人なのになぜそこまでいわれなければいけないのかと、怒りでいっぱいになりました。
その後、その上司の率直な性格が分かり、特に悪気はなかったということが理解できました。
しかし、当時の、日本人の本音と建て前が区別できなかった私には、その言葉を理解できませんでした。
むしろ、私の反感をかってしまったのです。
抵抗心が強い私にとってそれは逆効果でした(P060)。
台湾人とうまくつき合うには、まずこの「面子思考」を知ることをおすすめしたいと思います(P061)。
台湾ではその教育を「国民党教育」「国民党政治教育」と名づけています。
文字通り、国民党の都合によってつくられた教育を指しています。
たとえば、モンゴルは一九二一年に中国から独立、六一年には国連にも加盟し、現在一二〇カ国と外交関係を持っていますが、にもかかわらず、九六年まで台湾の中華民国全図にはモンゴルがまだ含まれていました。
その地図を信じて疑わなかった私は、日本に来てから、「モンゴルは中国の一部か、独立国か」という問題で、日本の友達と口論になりました。
それを思い出すたび、なんというひどい教育だとつくづく感じます(P071)。
台湾では「男児有涙不軽弾」という言葉があるように、男性は簡単に涙は見せません。
台湾人男性にとって涙とは弱者の象徴です。そして、小さいときから男性は軍隊に入り、国を守る義務があると教育されてきたせいでしょうか、だれもが弱者の象徴である涙を嫌います。だから、意地でも格好つけて人の前では泣きません(P186)。
私たちアジア人にとって、欧米人がみんな似たような顔をし、区別がつかないのと同じように、欧米人も私たちが日本人なのか韓国人なのか中国系人なのかを判別するのが難しいようです。
だから、日本のことをちょっと勉強すると、すぐそれは日本人の特徴だとか不思議なところだとか決めつけ、誤解します。
それはある程度しかたがありません。
しかし、日本人自身やアジア人までも欧米人が書き立てたものを基準にして、日本や日本人を判断してしまうのはおかしいと思います(P212)。