『特捜検察の事件簿』

「特捜検察の事件簿』
藤永幸治
講談社

読後の感想
日本の検察が対応してきた疑獄事件、汚職事件の流れが一望できるためになる本でした。恥ずかしながら知らない事件が多くネットで検索をしながらの読書でした。検察官は強い信念に基づいて行動しているのだなぁと改めて実感しました。

印象的なくだり
疑獄事件の場合、「捜査過程で自殺者が出ると本物の事件である」と捜査官内部では言い伝えられてきた。自分のところで食い止めようとしても、証拠を突きつけられて黙秘を続けることもできず、ついに上司や重要な関係者の名前をあげて真相をすべて供述すると、たいがいは心も落ち着き、安堵の色を見せるものだが、ときにその供述の重大性に心を傷めて死を選ぶケースも出てくる。取り調べの場合、重要参考人ではなく、むしろ容疑者として逮捕・勾留したほうが人命尊重になることもあると痛感せざるをえない事件だった(P102)。

佐川急便事件で、自民党副総裁金丸信に対し、当時、東京高検検事長だった私が指揮をして、二〇万円の略式命令(該当行為に対する政治資金規正法違反として、法定刑の最高刑)を請求し確定させたことにもろもろの批判もあった。しかし、当時政界の最高権力者で何人の指弾できなかった者に刑事罰を科し得たのは、やはり検察のみであり、間違いのない判断であったと確信している(P205)。