わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
光文社
西林克彦

読後の感想
 文章は読めるけど意味が分からない、という理解不十分の原因について書かれた本です。
 平易な文章と例題がいくつか登場するので、読み進め易い本だと思います。
 いくつか、パターンを分けて解説してありますが、大きな原因の一つは既知のことがらが正確に読解することを阻害するといったものです。

印象的なくだり

実は論理的にいえば、様々な状況で法則が成立することは、その法則の「確からしさ」や「耐力」を増しはしても、「正しさ」を証明するものではありません。
適用された状況には必ず限りがありますし、未だ適用されていない状況は、原理的に必ず存在するからです。
また、帰納法についても同様です。
帰納はいくら数が多くても、必ず限りあるデータに依拠していますが、法則は「全ての……は……である」のように普遍的に言いきるかたちをとっており、そこには必ず論理的な飛躍がつきまとうからです。
法則を得る過程が論理的だから、法則が法則たり得るのではないのです。法則を得る過程は非論理的であっても、またはよくわからなくでもよいのです。
法則として重要なのは、導かれる過程の論理性(実はこれは求められないのですが)ではなく、それが導き出された状況以外のところでテストしたとき、「整合的」であるかどうかなのです。
テストの結果が予測と整合的でなければ、その法則は反証されます。
そして、逆にテストの結果と法則と整合的であれば、その法則は当面の耐力を示したことになり、維持されてよいことになります。
これが験証とよばれるものです(P193-194)。